【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り (ページ9)

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それから彼は何も話さなくなった。

気まずい空気が流れる。

耐えられなくなった私は
とりあえず、頭を下げる。

「嘘ついて、ごめんなさい……」

「私は別に怒ってませんよ」

そう言ってるけれど
沖矢さんから話しかけてくることは一度もなかった。

それを怒ってないとは、普通言わないと思う。

「どうして私があそこにいるって
分かったんですか？」

「私も見ましたから、
あなたが見たのと同じものを。

だから、様子が豹変したあなたを見て
事件が解決した後、どう行動するか
予想していました」

いつの間にか、空も暗くなっていて
チラホラと街に明かりがついていく。

車内も暗くなって
沖矢さんがどんな顔をしているか見えなくなる。

反対方向から来る車のライトの光で
たまに、少しだけ照らされるくらいだった。

「そこまで分かってて
どうして私を連れ戻したんですか？

私を庇ったら
あなたまで狙われることになるのに」

さっきも、あの雨の日に倒れた時も。

巻き込みたくないから離れようとしたのに
また助けられた。

「もう二度と繰り返したくないだけですよ」

過去に何があったのか
聞きたくても聞けなかった。

彼が話したくないことを
無理に聞き出すのは忍びない。

車が工藤邸に停められる。

これからこの家が私の借り住まいになるけど
まだ慣れていないからか
まだ実感が湧かない。

ここが私の居場所になったら、どれだけ……。

どれだけ嬉しいか。

沖矢さんは買い揃えた荷物を
私の部屋まで運んでくれる。

部屋を出て行こうとする沖矢さんを
つい、呼び止める。

「あの、」

言葉にするのは慣れなくて
どうも恥ずかしい。

嘘とか上部だけの言葉なら
いくらでも出てくるのに。

「巻き込みたくないとはいえ
嘘をついてごめんなさい」

咄嗟に出たのは
車内でも発した言葉。

「それと、」

本当に言いたいことは
なかなか口から出てこない。

彼の視線が突き刺さるのを感じて
目が合わないように、わざと視線を逸らす。

「その……
助けてくれて、ありがとうございます。昴さん」

どんな目で見られているかは分からない。

恥ずかしくて彼の方を見れないから。

「そ、それじゃあ、私は着替えるので」

部屋から出てください、と
彼の背中を押して扉の向こうに追いやった。