【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り (ページ36)

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建物を出ると
車が一台停まっていた。

それは見慣れた赤いスバルで

私の姿が目に入ったのか
彼は車から降りて、駆け寄ってくる。

彼の手には
私のマフラーがあって

涙の跡にそっと触れてから
それを私の首元に巻いた。

「怪我はありませんか？」

私は、静かにコクンと頷いてから

後始末の時に回収した薬莢を
ハンカチに包んだ状態で彼に渡した。

助手席のドアが開けられて
私は大人しく、車に乗る。

車が動き始めて
しばらくの間、静寂が続いた。

「黙っていてすみませんでした」

先に沈黙を破ったのは
彼の方だった。

「……なんのことですか？」

「気付いているんでしょう、
私が仕掛けた盗聴器だと」

盗聴器に気付いたのは
昼間、バーボンに会った時だ。

盗聴器をつけられてないか聞かれて

衣類や鞄を確認した時、
スマホケースが妙に分厚いことに気付いた。

家に帰ってから、中を確認すると
思っていた通りそれがあった。

バーボンには何も話していないから

このことを知っているのは
私と盗聴器を仕掛けた人だけだ。

「怒っていません」

だけど、もしかして
信頼されてないんじゃないかって思うと

心臓が締め付けられて苦しくなった。

昴さんが何かを隠していることは知っている。

もし盗聴器を仕掛けた理由を
直接彼に聞いたとしても

私が求める答えは返ってこないと
分かっている……。

嘘で誤魔化されるくらいなら
黙っていてくれる方がマシだ。

「ただ、自分で思っている以上に
私が昴さんを信頼していることだけは
嘘偽りありません」

その事だけは、知っていてほしかった。

今後何が起きても信じてほしいと思った。

お母さんが何も話してくれないことに
不満を抱いて、葛藤しているのに

どうしてか、昴さんのことは
素直に受け入れている。

昴さんと過ごした時間が
そうさせているのだろうか。

「すみません。

でも、今はまだ話せません」

今はまだ、か……。

どんな事情があるのか知らないけど
昴さんも組織と関わりがあるのは確かで

それを今は打ち明けられないけど
いつか打ち明けられてくれる、

そう解釈していいのだろうか。

なら、今度は私が待つ番だ。