【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り (ページ33)

今日:24 hit、昨日:24 hit、合計:196,946 hit

File33：ページ33

「この期に及んで
まだこの場をやり過ごそうと
考えているんですか？」

挑発的な言葉が癪に触って
平然とした態度で接する。

あなたは確信もなしに
こんなことをする人じゃない。

もしやり過ごそうとしたら
逃げられないように追い詰めるでしょう？

「まさか。
私にはあなたから逃げる理由がないもの」

余裕の笑みを浮かべると
彼の表情に緊張感が走った。

「今なら私をジンの前に突き出せば
あなたはボスに近付くことができるものね」

あなたが私の味方なのか
あるいは敵なのか、確かめたかった。

「確かに、あなたを組織に差し出せば
組織内での僕の地位は昇格するでしょうね。

でも、手荒なことをするつもりはありません。

彼にとってあなたは
妹のような存在でしたからね」

彼は、組織の中で初めて
私のことを子ども扱いした人だ。

もし過去に戻ってやり直せるなら
彼が今も生きている筋書きにしたい。

「なら何が目的で私に連絡してきたの？」

「あなたに取引を持ちかけるためですよ」

＊

もう辺りが暗くなってきたっていうのに
まだ戻ってきていない。

すぐに戻ってくるって言ったのに……。

一方、昴さんは運転席で
腕を組みながら眠っている。

この二人、付き合ってるのかと思ったけど
彼女の帰りが遅いのに連絡一つしてない。

私の勘違いだったのかしら。

でも、この状況は好都合。

彼の正体を確かめるなら
彼と二人きりの今しかない。

そっと助手席のドアを開けて、
彼が目を覚さないか凝視しながら

大きな音を立てないように
助手席にゆっくりと足をかけた。

この人の正体を確かめたい……。

彼のマフラーに手を伸ばす。

全神経がその一点に集中しているからか
心臓の鼓動が大きく感じる。

緊張しているせいで
いつもより速い気がした。

マフラーに手が届いて
慎重にマフラーを解いていく。

後もう少しで首元が見える。

その刹那、彼に手首を掴まれた。

「ここから先はこちらのエリアだ。
君の領分じゃない」

強い口調で牽制される。

でもすぐに紳士的な姿勢になって
嘘くさい笑顔を浮かべた。

「大人は寒がり、風の子じゃありませんから」

そう言って
少しだけ解けたマフラーを巻き直した。

「遅くなってごめんなさい。

……どうしたの？
ドア開けっぱなしで」

「いえ、なんでもありませんよ」

それからまもなく
事件を解決したのか工藤くんも戻ってきて
真っ直ぐ家に帰ることになった。