【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り (ページ30)

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「じゃあ皆、気をつけてね」

皆揃って外に出てきたのに
百鬼さんは、やっぱり来るつもりがないようで
昴さんの車に乗る私たちをお見送りする。

「あれ、百鬼さんは来ないの？」

工藤くんが尋ねると
百鬼さんは困った顔をして謝る。

確かめたいことがあるのに
彼女が来ないなんて困る。

「ごめんね、実は滑れないの」

今、耳たぶを触った。

「でも、さっきは
“皆でスキーなんて楽しそう”って
言ってたじゃない。

それに、滑れないなら私が教えてあげるわ」

我ながら意地悪な返し方だと思う。

でも、こう言えば
彼女は断れないと確信があった。

……ほら、案の定困ってる。

反応を待っていると
彼女は、悩みを吐き出すように
溜め息をして言った。

「……私の負けね。
用意するから先に車に乗ってて」

「江戸川くんは助手席ね。
私と百鬼さんは後ろに座るから」

「オメーなぁ」

「いいじゃない。
シャーロキアン同士仲良くすれば」

「ったくよ……」

一度家に戻った百鬼さんは
戻ってくると、

昴さんのように
マフラーを巻いていた。

＊

信号が赤になり、車が停止した時
助手席に座る探偵さんが
「あっ」と、小さく呟いた。

「高木刑事」

その声でこちらに気付き
高木刑事が車に駆け寄った。

眠そうにあくびしてたけど
捜査が大変で眠れてないのかしら。

「張り込み？」

「まあね。
今千葉くんと交代したところさ」

「早く復帰できてよかったね」

「でも、今も夢で見るんだ。

だからいつも自分に言い聞かせてるよ。
落ちてない、落ちてないって」

次の瞬間。

「落ちたぁああ！！？
誰か落ちたぞーっ！！」

誰かの叫び声が辺りに響いた。

そして、波紋を呼ぶように
悲鳴が広がっていく。

自分のことを言われていると思ったのか
叫び声がした瞬間、
高木刑事がビクンと身体を震わせた。

「コナンくん、
後ろにまだスペースあるから
こっちにおいで」

隣に座る百鬼さんが
座席の空いている部分を
トントン、と叩く。

そういえば、彼女は
彼の正体を知ってるのかしら？

江戸川コナンの正体が
工藤新一だって。

「ありがとう、Aさん。

高木刑事、前に乗って！
早く現場に行こう！」

工藤くんが後部座席に移動して
助手席に高木刑事が乗る。

昴さんは悲鳴が聞こえたところへ
急いで車を向かわせた。