【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り

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ーーーーまさか
そんなこと、あるわけがない……。



「あの手紙、
誰からだったんですか？」

「それは……」

「お願いです、教えてください。
あの手紙の差出人は
私の大切な人かもしれないんです」



もし、今頭の中に浮かんでいる
ありえないことが真実だったら

昴さんが私の血縁者について
確認したことも繋がる。


だから、これだけは絶対に
確かめないわけにはいかない。



「……“レリック・ノーテス”です」



レリック・ノーテス……？


脳裏でその名前を反芻する。


そして、
その本当の意味を理解した時
疑いが確信に変わる。



「……テリー・レノックス」

「アメリカの作家、
レイモンド・チャンドラーが書いた
『The Long Goodbye』の人物ですね」



作中では、

テリー・レノックスは
殺人の容疑をかけられ
その後、自ら命を絶つ。


しかし、物語の最後で

実は、彼は整形して
生きていたことが判明する。



「その小説に出てくる
有名なセリフを知っていますか？」

「物語の終盤、
探偵のマーロウが
レノックスに言う言葉ですね。

確か、“ギムレットには早すぎる”」



手紙の差出人に
「レリック・ノーテス」と書いたのは

ギムレットと関連がある、
この小説を連想させるため。


そして、
「テリー・レノックス」と示したのは
作中で彼自身がそうであったように

ギムレット、……お母さんが
生きていることを示唆するため。



「ギムレットは、
母のコードネームなんです。

あの手紙は私の母が書いたものです」





＊



私は、昴さんに
ここに来るまでの経緯を話した。


お母さんの正体は
まだ分かっていないけど
組織に潜入していたのは確かだ。


そんなことも知らずに
組織に入った私を守ろうと
母親であることを告げず、

私が組織に疑われないように
死を偽装したんだ。


そして、今どこで何をしているのか
手紙に何が書かれていたのか
昴さんが何も教えてくれないのも

私を巻き込まないためだと痛感して
胸が締め付けられた。


でも、お母さんは
あの手紙で、生きていることを
ちゃんと伝えようとしてくれた。

お母さんがギムレットだと
知っている私が気付くように
あえて、あの名前が使われたのだから。



ギムレットには
「長いお別れ」という意味があるけど
きっと、そんな悲しいものじゃない。


遠くにいても
ずっと想ってる。

そんな暖かくて、
優しいもののような気がした。

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