【名探偵コナン】裏切者はアイツのお気に入り (ページ1)

今日:14 hit、昨日:24 hit、合計:196,936 hit

File1：雨の気まぐれページ1

冷たい雨粒が全身に引っ切り無しに当たる。

熱を帯びていた身体が少しずつ冷えていく一方で
気怠さは一層酷くなるのを感じて

明日は寝たきりで確定だ、と確信する。

もう随分と走り続けていて
体力も体調も限界が近い。

それに、あの場で急いで手当てした傷口が
開いているのを感じる。

あと少しだというのに
身体がいうことを聞いてくれない。

「あっ……」

寒さと疲労で力が入らなくなって転ぶ。

それでもこの雨が止む前に辿り着かなければ……。

私の痕跡が雨水に流されて、何も残さないように。

ようやくそれらしき建物が見え
目的地に間違いないかと表札が「工藤」であることを確認する。

脚の震えは止まらず立っているのもやっとだった。

産まれたばかりの小鹿のようにふらふらと歩き
呼び鈴を鳴らしてから、扉にもたれる。

家主の工藤優作は今、海外に住んでいるようだから
会えない可能性が大きいのは知っている。

でも、私にはもう彼しか頼る人がいない。

呼び鈴を鳴らしてから少し経ったが
誰も出てこない。

やっぱり彼はもうここにいないみたい……。

早くここを去ろうと身体を起こした時
扉が開かれた。

しかし、それは私が期待した人物ではなく
ハイネックの服装に眼鏡をかけた糸目の男性だった。

この人は……彼の知り合い？

現れた男は傷だらけの私を見るや否や
驚くと、眉間にしわを寄せて
「何があったんですか」と物凄い剣幕で問い質す。

「……工藤優作さんはここにいますか？」

声がかすれて上手く話せない。

ちゃんと伝わったのか不安で
もう一度尋ねようとした時
「彼はいませんが……」と返事が返ってきた。

あぁ、やっぱり……。

元々ダメで来たんだから
期待していたわけじゃないから、と言い聞かせる。

「でしたら、私がここに来たことは忘れてください。
どうか、お願いします……」

すぐにここを立ち去らないと。

もうとっくに身体は悲鳴をあげている。

それでも立ち上がらないと。

男の視線が突き刺さるのを無視して
工藤邸を後にした。