急病人 10 (和) ページ10
翔Side
翔「熱出ちゃったんだって?
大変だったね〜。映画、観に行ってたんでしょ?」
『ん……は…い…』
そう簡単に打ち解けられるとは思ってなかったけど
ここまで俺の渾身のスマイルが効かないとなると正直けっこうきつい(笑)
和は点滴の準備しに行っちゃったから
帰ってくるまでに少しでも仲良くなっておきたいと思ってたんだけどな。
和「翔にぃ、場所変わってもらってもいい?」
翔「あぁ、うん。ほら、和先生が帰ってきたよ」
俺はお手伝いするからねって言いながら立ち上がると
空いたベッド横のイスに点滴セットを持った和が座る。
結局緊張といてやれなかったなぁ…
悔しいけど、俺の力不足か。
和「翔先生、優しかったでしょ? 俺の言った通り。
あ、そうそう。もう一個忘れてた。
翔先生は優しくてかっこよくて、すご〜く撫で肩な先生って言ったんだった。
どう? これは本当だったよね」
翔「おい、和!! それは余分だろ!!」
和「いたっ!! 痛いよ翔にぃ。
自分の肩がなくて悔しいからって、俺の肩たたかないで(笑)」
翔「まったく…余計なこと言わなくていいから。
ひなちゃん困ってるだろ」
和「ふふっ。ごめんねぇ、翔先生うるさくて」
俺らのやり取りを見て、クスッと笑ったひなちゃん。
それを見た和はニコッと笑ってうなづいている。
…最初からこれを狙っていたのだとしたら
さすがとしか言いようがない。
ひなちゃんが俺を警戒するのも
なかなか緊張が解けないのも予想していた。
あらかじめ場を和ませるネタを準備して
俺までまんまと和に操られて…
って、これは言い方が違うな。これじゃ和が悪者みたいだ。
助けてもらったんだから、和に感謝しないと。
和「面白い先生でしょ〜?
翔先生はね、こうやってイジられるのが好きなんだよ?」
なんかまた勝手なこと言ってるけど
ひなちゃんも笑ってるし、必要な冗談だと判断して見逃してやる。
決して好きではないけどね!!
もうちょっとお兄ちゃんを敬ってほしいものだよ。
和「翔にぃ? ここ、いい?」
翔「ん、はいよ」
和は話しながら準備を進めていたようで
ひなちゃんの服を腕まくりさせ、駆血帯まで巻き終えていた。
俺は和に指示されたように軽く腕をつかんで固定する。
点滴、トラウマだったんだよな…
今は消毒が始まって顔を強張らせてるけど
ここまで泣かずに頑張れてるのはすごいよね。
和先生も、さすがだよ。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年10月14日 18時
