パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ10)

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長男の涙　10 (智) ページ10

智Side

和「じゃ、始めるね。
ちょっと胃の中見るだけだから。
そんなに緊張しないで。」

腹痛の原因をつきとめるために、
胃カメラをすることになった僕。

ずっと前から胃炎が原因なんだろうな
ってことはわかってたけど、
そんなにひどくはないだろうと思ってた。

あんな生活をしていれば
悪化することくらいわかりそうなものだけど、
あの時の僕は思考までおかしくなってたみたいだ。

薬でも飲んでたら違ってたのかな…

今更そんなこと考えても、もう遅いんだけどさ。

翔「ほらほら、力入り過ぎだよ。
深呼吸してみな?」

和「鼻からだから苦しさはそんなにないだろうけど、
力入ってると疲れちゃうからさ。
もっと楽にして?」

智「ん……ごめん」

俺がやるより、
俺の病院の専門医に頼んだ方がいいんじゃないか。

そう言った翔に、
僕は翔に検査をしてもらいたいと頼んだ。

でも、絶対に首を縦には振ってくれなくて…

だったら和にやってもらおうって翔に提案されて、
知らない先生にやられるんなら和の方がいいって思ったんだ。

俺より和の方が上手だから…
って翔は言ってたけど、
別にちょっとくらい苦しくったって、
翔に診てもらえるのなら
それでもいいって思ってたんだけどね。

……なのに、いざカメラを目の前にすると怖くなる。

和と翔が一緒に深呼吸してくれて
だんだん力は抜けてきたけど、
あれだけ心配かけといて
まだここでも迷惑かけんのかって思ったら、
また泣きそうになった。

翔「怖いもんは怖いんだって。
誰だってそうでしょう?

それを緩和してやるのが医者の和で、
安心させてやるのが助手の俺なの。

患者さんの智にぃは、
俺らの声を聞いて、身を任せてればいいんだよ。

それが普通のことでしょ?
何かおかしいことある?」

そんな僕の気持ちをわかっているかのように、
翔が声をかけてくる。

ちょっと強めに
ぽんぽんぽんって背中をたたかれて、
その拍子に心のもやもやが
口から吐き出されたような気がした。

「和先生、それなりに良い腕してますよ～」
って笑っている翔。

「痛くない怖くない苦しくないが私のモットーです」
って渋い声で宣言している和。

そんな2人に、僕も自然と笑顔になった。

翔「安心してよ。あなたの信頼する弟でしょう?」

ふざけたように言った翔だけど、
本当にそうだと思う。

こんなにいい子が弟だなんて、
そんなの僕にはもったいないくらいだ。