長男の涙 7 (智) ページ7
翔Side
自分の感情をコントロールできずに、
ただ智にぃを責めることでしか正気を保っていられなかった俺。
でも、智にぃの涙を見たときにハッとしたんだ。
智にぃの苦しさが
一気に俺になだれこんできたから。
俺なんかよりもずっと、智にぃは苦しんでいたはず。
頼れるもんなら最初からそうしていただろう。
家にだって、本当は帰ってきたかったはずだ。
でもそうしなかったのは
俺らに迷惑をかけると思ったから。
一人で限界まで耐えてでも
智にぃは俺らを守ることを選んだ。
翔「ごめん……
智にぃの気持ち、わかってたのに…
俺の勝手で……酷いこと言った…」
智「違うよ、翔。
悪いのは僕。弱いのも僕だから…」
翔「でも、俺の気持ちは変わんないよ。
智にぃが一人で苦しんでいたのが悔しい。
俺、何もできなかったから…」
智「ん……」
翔「俺らさ、お互いを大事に思い過ぎたせいで、
助け合いから遠ざかってたわけじゃん。
俺…智にぃと約束したの。
今度は俺が……って。
だからさ、約束守らせてよ。
智にぃも俺らに気を使わないで何でも言ってほしい。
助け合い……家族なら、当たり前なんでしょ?」
智「……。」
翔「智にぃ。」
智「…めん……ごめんっ」
目を閉じて、絞り出すように言った智にぃ。
今度のごめんは、今までとは意味が違うよね。
俺にはわかる。
翔「俺らに任せてよ、智にぃ。
家族の力がどんな薬より効くって知ってんでしょ?
一人で頑張りすぎなんだよ。
まったく…バカ智。」
智「いてっ。ごめんなさい。悪かったよ…」
翔「バカ。バーカ。」
智「むぅ…バカ言い過ぎ。」
ペチって軽くおでこを叩かれて、俺に苛められて、
それでも最後には笑顔を見せてくれた智にぃ。
やっぱり智にぃはこうじゃなきゃ。
もう、そんなふうに泣かないでよ。
智にぃの笑顔さ、俺の安定剤なんだよ。
それは、他のみんなも同じだろうけど。
翔「俺らのこと、頼ってくれる?」
智「ん。今までだってずっと、
頼りにしてたんだよ?」
翔「ふっ。知ってる(笑)
隠してたのは、迷惑かけないためでしょ?
俺だって、よく同じことするし…」
智「ね。いつも我慢しすぎだって言われてるもんね。」
翔「え? 智にぃだって同罪だろ?」
智「ふふっ。そうだね。
結局みんなっ……うぅっ…」
翔「智にぃ!?」
笑顔で話していた智にぃの顔が突如として歪んだ。
しまった…こんなことしてる場合じゃなかったよな…
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
