松岡先生のお説教 9 (翔) ページ21
翔Side
松岡先生の言葉に納得している自分もいる。
でも自分の意見を押しつけ過ぎて
患者さんの選択肢を狭めてしまうこともあるわけで…
そう考えるとどうしても恐くなるんだ…
松「ブレなきゃ大丈夫だよ。
翔なら大丈夫だ。
患者さんのこと、よく見てるもんなぁ。
これだけ親身になってたら
おのずと正しい選択肢も見えてくるだろう。
もし迷ったら、俺らに相談すればいいしな。
自信持ってやってればいい。
ビクビクしながらだと
正しい判断ができなくなるぞ?」
そう話す松岡先生の顔は真剣そのもので
俺は先生の目を見ながら大きく頷いていた。
そうだ…俺が恐がってたらダメだよなぁ…
患者さんの方が不安なんだから。
俺が迷ってたら
患者さんまで迷ってしまう。
松「まぁ、翔は今まで通りにやればいいってことだ。
ただし一つだけ言いたいことがある」
翔「言いたいこと……」
松「俺に嘘をついたこと、これだけは許さない」
低く重くなった声に、身体が固くなる。
あまりの威圧感に
つい顔をそらしてしまった。
松「こっち向けよ。
人の話を聞くときは目を見なさいって
教わらなかったか?」
翔「はい…すいません……」
自分勝手な行動で周りに迷惑をかけたのは俺だ。
怒られて当然。
何を言われても仕方ない。
松「嘘をついてまで検査をしたのは、
他の人に任せたくなかったからだろ?
自分が約束をすっぽかしたら、
信頼関係が崩れるとでも思ったか」
翔「はい……」
松「ふーん。そう…
俺はきちんと説明すれば、
わかってくれたと思うけどな。
それとも中川さんのこと、
事情も聞かずに怒るような人だと思ってるのか?
簡単にお前を切り捨てるような人なのか、
中川さんは」
翔「そんなことっ…そんな人じゃ……」
松「違うだろ?
お前さぁ、俺らに迷惑かかると思って
言わなかったのもあるんじゃないの?」
……だって、そうだろ。
病棟まわりに外来にオペに検査に…
みんな休憩もろくにできないほど
忙しく働き続けてるんだ。
それなのに
俺はもう何日も仕事をできずにいた。
その間、他のドクターは
俺の分の仕事までやってくれていたんだ。
もうこれ以上、迷惑はかけられない。
翔「ごめんなさい……」
また謝ることしかできない自分が情けなくて
じわっと熱いものが上がってくる。
部屋に響いた「ごめんなさいじゃねぇだろ…」
って低い声にビクッとして
俺の視界はさらに滲んでいった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
