みんなの宝物 11 ページ36
和也Side
暗いオーラをまとった翔にぃが戻ってきたときは
あぁダメだったんだって思った。
今は誰も受け付けてないのか…って。
でも、翔にぃは
俺じゃなかったら大丈夫かもしれない、って。
過呼吸寸前だから様子見にいってやってくれって
小さくつぶやいた。
智にぃはゆいちゃん抱いてるから
俺が行くことになったけど、
翔にぃがあれだけ落ち込むってことは
俺らを相当拒絶してるってこと。
今いったところで俺を受け入れてくれるだろうか…
そう不安に思いつつ部屋に入ると、
Aは俺の声にも気づかないほど
呼吸を乱していて、
さっきまでの不安なんて一気に吹っ飛んだ。
正直かなり焦ったけど、
でも俺に抱きついて泣き続けるAは
どこにも行かないでって言っているかのようで、
これならもう大丈夫だって、ホッとした。
ここまで頑張ってくれれば
あとは俺らがなんとかしてやる。
Aは昔からそうだ。
助けを求められるようになるまでが
長くて苦しい道のりなんだよね。
和「うん、そっか。
自分のせいでゆいちゃんが悪く言われるのが
嫌だったんだね?」
泣き声を上げつつも一言ずつ言葉を
伝えてくれるAの背中を撫でながら、
次の言葉が出てくるのを待つ。
ところどころで話をまとめながら繰り返してやると、
うんうんって頭が動いて
そのたびに胸が苦しくなるのか泣き方が激しくなった。
それでもAは最後まで頑張って話してくれて、
その内容に唇を噛みしめていた俺は
涙をグッと堪えてAの身体を
よりいっそう強く抱きしめた。
悔しかっただろうな……
自分の子供を、そんなふうに言われて。
初めての子供。初めての子育て。
心配なことも不安なこともたくさんある。
そんな中であんなことを言われれば
かなりのダメージになるだろう。
つらいよね……
自分を全否定されたようなものだもん。
大事な大事なゆいちゃんに
悲しい思いをさせたくなくて、
必死になっていたんだね。
和「A、人ってさ、
顔も性格もみんな違うでしょ?
人それぞれだよね?」
「んっ……うんっ……」
和「それと同じようにさ、
成長の仕方も、人それぞれなんだよ?」
何も焦ることはない。
これからゆいちゃんは、
ハサミを使えるようになるし
着替えもできるようになるよ。
早い、遅い、もすべて個性。
大人はそれを
見守ってやらないといけないんだ。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
