みんなの宝物 7 ページ32
A Side
誰もいない静かな家の中で
何をするわけでもなくボーっと天井をみつめる。
和にぃがゆいを病院に連れていくって言ったとき
それを拒否することは、今の私にはできなかった。
ゆいのことが心配なのは確か。
きっと熱を出しちゃったのは私のせいだから、
ごめんね…って、ちゃんと看病してやりたい。
でも、ゆいと一緒にいると
どうしても辛い態度をとってしまう。
翔にぃに言われた。やりすぎだって。
そんなの、私にもわかってる。
でも、大事な娘だから…
自分よりも大切なかけがえのない存在だから…
だからこそ
ゆいには辛い思いをしてほしくない。
人よりも劣ってるって
悲しい思いをしてほしくない。
そう思うと、どうしても焦ってしまう。
ゆいは嫌がってるのに
無理やりやらせていじめみたい…
翔にぃの言ってることは正しい。
でも認めるのは嫌で
あんな態度をとってしまった。
おにぃたちは全部話せって言うけど
話したところで何が解決するのかわからない。
私が変わらなきゃ、意味がないから…
.
あの子って、心臓に病気があるんでしたっけ?
産まれてすぐに手術したって聞きましたよ?
通りで…身体も弱そうだものね…小さいし。
そういう子って、発達も遅いのかしらね。
いまだにハサミも使えないみたいですしね。
好き嫌いも多いみたいだし
若いお母さんだもの、仕方ないわよ。
しつけの仕方も知らないのかしら。
身体が弱いからって甘やかすからいけないのよね。
.
＿＿＿＿＿あの日の会話がフラッシュバックする。
聞いたことのない声だった。
きっと、私とは年代も違って
話す機会のなかった人たちなんだろう。
仲のいいママ友とは
ゆいの成長の遅れを話すこともあった。
お友達と比べて、ゆいはかなり幼い。
身体の大きい子と比べれば
1歳や2歳離れているといっても不思議じゃないくらいだ。
でも、それを今まで問題に考えていなかった私は
心配だとは思いながらも仕方ないよね、で済ませていた。
友人もだんだん成長していくわよ
って言ってくれていたから、安心してたんだ。
でも、それが間違いだった。
ゆいは悪くない…
あんなふうに言われてしまったのは、私のせいだ…
悔しくて…
悲しくて…
次から次へと零れ落ちていく涙を拭う気力もない。
私はもれる嗚咽を抑えることもせず、
疲れ果てるまで、ひとり泣き続けた。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
