パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ24)

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松岡先生のお説教　12 (翔) ページ24

翔Side

翔「あっ、中川さん。起きてたんですね」

『あぁ。なぁ、先生。
痛みどめ効いてねぇんだけど。どうなってんだよ』

2日前にオペを終えた中川さんは、
術後の痛みのせいでちょっと不機嫌。

でも、素直に痛いと
言ってくれるようになったのは進歩したところ。

“あんた”から“先生”になったのも
良い変化と言っていいだろう(笑)

翔「かなり痛みます?
違うお薬に変えてみましょうか」

『そうしろって言ってんだよ。ったく、ヤブ医者が』

翔「すいません。
じゃ、本物の医者、呼んできましょうかね」

中川さんの治療は
俺と松岡先生が中心となって進めてきた。

先生はただのサポート役だって言ってたけど、
抗がん剤の選択に迷っていた時も
オペに踏み切るタイミングに悩んでいた時も、
さりげなく答えを導いてくれたのは先輩だった。

松岡先生がいなかったら
中川さんに奇跡は起きなかったかもしれない。

『あの強面のヤブを呼ぶのか。いいよ、いらない』

先生がいてくれれば充分だろ。

そう小さく聞こえてきた言葉に笑みがこぼれる。

普段は辛口なくせに
たまにこういうことを言うから嬉しさは倍増だ。

ただ俺の尊敬する先輩を強面のヤブって
それはちょっと寂しいな(笑)

松「コラ、翔。何笑ってんだ。
中川さ～んヤブはないでしょう、ヤブは。
俺にもちょっとは優しくしてくださいよ～」

後ろから先生の声が聞こえてきて
頭をペチって叩かれた。

それを見て中川さんは笑っているし、
うるせぇヤブって言われた松岡先生も
負けじと言い返して病室は一気に騒がしくなった。

先生、中川さんの言う“ヤブ”は褒め言葉ですよ。

ダンマリだったころと比べれば
こうして言い合いができるのは嬉しいこと。

口が悪いのも
きっと単なる照れ隠しなんだ。

『あぁ…くだらないことに付き合ったせいで疲れた…』

松「ほらぁ。少しは大人しくしててください」

『あんたがネチネチ言うからだろ。
なぁ、それよりさぁ。退院はいつになるんだ?』

翔「まだもう少し、投薬治療を終えたらですね。
腫瘍はすべて取り除きましたから、あと少しですよ」

そう言うと、中川さんは嬉しそうに笑った。

中川さんが諦めなかったから
頑張ってくれたから
こうして退院の日が手に届くところまできたんだ。

『いつかさ、俺の店に飯食いに来い。おごってやる』

照れたようにつぶやいた中川さんに
俺は、はいっ!!と大きく返事をした。