パパが治してあげようね *ARS* 6 (ページ41)

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えまーじぇんしー　5 ページ41

ASide

ぼやけた目を開けると、
目の前にスースーと眠るゆいの顔が見えた。

だんだん頭がさえてきて、
自分が熱を出して寝込んでいるということを思い出す。

智「まさき? お腹触るだけ。ね?」

静かな部屋に穏やかな声が響いていて
少し身体を起こして声のする方をのぞくと、

寝ている雅にぃのお腹に、
智にぃがそっと手を当てていた。

真剣な表情でお腹をグーッと押して、
雅にぃが小さく声をもらして身体をよじると、
眉を下げて胸をトントンとたたく。

しばらくするとお腹から手が離され、
ニコって微笑みながら
おしまいだよって優しく口元が動いた。

そんな、昔から変わらない智にぃの表情に、
なぜだかドキドキする。

わたしのときも、
毎回こうやって診てくれてたのかなって。

診察の時はあまり余裕がなくて、
智にぃの顔をこんなにじっと見ることはなかったから。

智「少しお腹の動きが悪いのかもしれないね。
気持ち悪かったりはしない?」

雅「ん……だいじょ…ぶ……」

智「うん。痛みも平気?」

雅「ん……」

智「ん。じゃあ何かあったらすぐに呼んでね?
今からご飯作るけど、食べられそうかな。」

小さな声で話している智にぃは、
穏やかな表情を崩さない。

でも、片膝を立てて座っている身体が
時々ふらって傾いて、
そのたびに床に手をついて体勢を立て直している。

大丈夫なのかな…
身体、ふらふらするんじゃないかな…

智「どーした、A。
…ん? どっか痛い?」

智にぃのこと、じーっとみつめていたら、
雅にぃの頭を撫でて立ち上がった智にぃが、
私の視線に気づいてそばまできてくれた。

急に声をかけられたせいで、なんだか上手く声が出ない。

智「ん～? どうしたの～
お熱は? 少しは下がったかな?」

首にそっと触れた手に、
あぁ、昔からこの温かい手が大好きだったなぁって、
心がほっとする。

いつもいつも
智にぃはこんなに安心感を与えてくれていたのに、

今まで診察のたびに
怖い怖いって泣いていた自分がちょっと恥ずかしくなった。

智「苦しいところはない?」

「うん…」

智「ん。じゃあ大丈夫かな。」

そういって立ち上がった智にぃが、
小さく“んっ”って声をもらして硬く目を閉じる。

目眩、酷そうだなぁ……
やっぱりちゃんと休んだ方が……

そう言おうと口を開きかけたとき、
智にぃは“ちょっと立ちくらみしちゃった”って笑って、
キッチンへ行ってしまった。