パパが治してあげようね *ARS* 6 (ページ33)

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足の怪我　9　(潤) ページ33

智Side

僕に足を押さえられて、翔が注射器を構えていて、
こんな状態でリラックスしろというのも無理な話。

一応初めにお腹をポンポンしながら
力抜いてね、と言っておいたものの、
こんなの医者の常套句のようなもので…

緊張してソワソワしている潤には
あまり意味はなかったようだ。

翔「潤、ちょっと落ち着きな?」

翔が苦笑いしてしまうくらい、潤の身体はガチガチ。

頭を持ち上げて、
足元にいる僕らの手元を見ようと頑張っている。

しばらくすると疲れてしまうのか、
ドサッと頭を枕の上におろして
数秒お腹を休めてからまた頭を持ち上げる。

さっきから落ち着きなくこの動作を繰り返してるから、
一度足から手を離して、枕元に移動してやった。

智「帰るころには
腹筋ムキムキになっちゃうね。」

力の抜けない身体を擦りながら、
唇を噛みしめて不安そうに
瞳を揺らしている潤に微笑んでみる。

かすかに動いて
僕の服の端に伸ばされた潤の指。

智「ん?…どした?」

潤「……んっ」

覗き込んだ僕からすぐに目を反らした潤は、
布をかすめた手を、
何もないところでぎゅっと握りしめた。

本当は掴んでいいよって言って
ずっと隣で手を握っててあげたいけど、
麻酔をする間だけは、固定なしはさすがに危ないから…

潤「さとに……もう、やる。
……はやく、終わらせたい。」

だからせめてこれだけでも、と思い、
頑張ろうとしている潤に僕のハンドタオルを握らせた。

智「すぐに終わるからね。頑張ろうね。」

翔「うん。ちょっとだけ我慢な…」

翔がそうつぶやいた瞬間、潤の身体がビクンと跳ねる。

腫れた指先に鋭利な針が深く刺さっていくほどに、
潤のくぐもった声も大きくなっていった。

翔「痛いよなぁ…ごめんな。」

潤「…っ…っぐ……ぅぅ…」

智「もう終わるよ。もう少し…」

歯を食いしばりながら、
喉から絞り出すような声を出している潤。

顔を横に背け、
タオルと自分の洋服を強く握りしめている。

普通なら僕らを蹴飛ばしても
おかしくないような状況なのに、

足を固定している僕は、
ほとんど力を入れなくてもいいほどで、

潤が動きを必死で抑えてくれているのがわかる。

翔「……つよいなぁ」

翔もそれに気付いているようで、
微笑みながら小さくそうつぶやいていた。

もっと聞こえるように言ってやればいいのに。

きっとついボソッと言ってしまうほど、
嬉しかったんだろうね。