パパが治してあげようね *ARS* 5 (ページ2)

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さとくんの虫歯　2　(智) ページ2

智Side

『虫歯がみつかったから、明日歯医者さんに行こうね。』

僕がベッドに入って寝ようとしていた時、
お父さんが部屋に入ってきて、そう言った。

今までは運がよかったのか、それとも元々歯が強かったのか、
一度も虫歯になったことがなかった。

だから今年の歯科検診も、
やるだけ無駄なのにな～って思ってたんだ。

僕の友達はみんな、嫌だなぁ、とか、
また歯医者かよ～、とか言ってたけど。

お父さんの前で口を開けるのは恥ずかしいし、
僕もちょっとは緊張してたけど、怖くはなかった。

だって、お父さんは優しいって知ってるし、
どうせ虫歯なんてみつからないと思ってたから。

でも、今回は違ったんだ・・・

智「・・・むしば?」

父「うん。右の奥歯。
さとくん、初めての虫歯だ。」

僕のベッドの端に腰かけているお父さんは、ニコッと笑っていた。

なんでお父さんは怖い顔をしないんだろう。

虫歯を作るのは悪いことじゃないの?
怒ることじゃないの?

智「お父さんは、うれしいの?」

父「ん?」

智「僕が虫歯になって、うれしい?」

そう言うとお父さんは、
細めていた目を、大きく開いてびっくりしたような顔をした。

父「そんなわけないよ。
さとくんの大事な歯を、バイキンに食べられちゃうのは寂しい。」

智「そう、だよね・・・
・・・おとーさん、僕は悪い子?」

父「どうしてそう思うの?
虫歯になっちゃったから?」

智「うん・・・」

父「さとくんはさ、毎日かかさずに歯磨きをしてたでしょう?

歯磨きもせずに甘いものばっかり食べてたら、
それはちょっと悪い子かもしれないけど、さとくんは違うもんね?

お父さんは、ここまで虫歯を作らなかったことを
褒めてあげたいよ? 立派なことだ。」

もっと小っちゃいころから、虫歯だらけにしてしまう子もいるからね、
ってお父さんは悲しそうな顔をして言っていた。

どんなに気を付けていても、
虫歯になっちゃうことはあるんだって。

だから僕は悪い子じゃないって、
お父さんは頭を撫でながら言ってくれた。

僕もホッとして、
微笑んでいるお父さんに向かって、ニコって笑ったんだ。

でも、一つ心のもやもやがなくなると、
また次のもやもやがやってくる。

僕は歯医者さんのことを何も知らない。

どんなところ?
何をするの?

そんなことが一気に押し寄せてきて、急に怖くなった僕は、
唇をグッと噛みしめながらお父さんから目をそらした。