パパが治してあげようね *ARS* 5 (ページ22)

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膀胱炎　11　(翔) ページ22

雅紀Side

翔「やだ・・・ごめん。さとにぃ・・・」

智「手が邪魔だね。
雅紀、ちゃんと押さえててくれる?」

恐怖に耐えられなくなったのか
翔にぃが謝罪しているのにもかかわらず、
智にぃの手は動き続ける。

消毒をしている智にぃを止めようとする
翔にぃの手を払った智にぃは、
ついに長い管を手に取った。

翔「やだっ、やだぁ!! やめて、さとにぃ!!」

雅「智にぃ、俺も謝るから!!
ごめんなさい・・・もう許してやって!!」

震える翔にぃを見ていられなくなった俺は、
智にぃの手をつかんで、入れそうになる管を遠ざけた。

てっきり怒られるかと思ったけど、
智にぃが発したのは、意外な言葉で・・・

智「大丈夫だから。ね?」

俺にしか聞こえないくらいの小さな声でささやいた智にぃの声は、
いつもと同じく、優しくて温かかった。

俺に向けられた笑顔も、
穏やかで怒りなどまったく感じない。

唖然とする俺に智にぃは小さく頷き、
やっと意図を理解した俺も、コクンと頷いた。

智「はい、ちょっと痛いよ?
泣いてもいいけど、暴れないでね?」

翔「あぁっ!! いやだ!! 許してください!!」

智「ん?」

翔「ゆる・・して。」

智「許してほしいの?」

翔「ん、ん。」

智「じゃあ、自分でトイレいける?」

翔「ん。」

智「治療も受ける?」

翔「ん。」

智「僕の言うこと聞ける?」

翔「はい。」

智「よし。じゃあやめようね。」

管も手袋もポイッとゴミ箱に放り投げた智にぃに、
翔にぃは口を半開きにしたまま固まっている。

そして、智にぃの笑顔を見た瞬間、
大粒の涙を流し始めた。

智「怖かったね。」

翔「・・うぅっ・・うっ」

智「もうこんな怖い思いするのいやだね?」

翔「・・・うっ・・・うん・・」

智「僕はね、翔に苦痛のない方法で治してあげたいと思ってる。
検査も、治療もね。

だからそれを嫌だって言われちゃうと、
痛いことや苦しいことを選ばないといけなくなっちゃうよ?

翔だってそうでしょ?
患者さんに一番負担のない方法を選ぶよね。」

翔「・・・うん。」

智「お腹が痛くなるから、
トイレに行きたくないって気持ちもわかるけどさ。
でも、カテーテル入れるよりは、ましでしょ?」

翔「ん・・ごめんなさい・・・」

智「うん。
僕もちょっとやりすぎたね。

ちゃ～んと翔が一番楽な方法で、
検査も治療もしてあげるから。
頑張って治そう?」

そう微笑んだ智にぃに、
ようやく翔にぃの表情も緩んだ。