パパが治してあげようね *ARS* 4 (ページ10)

今日:25 hit、昨日:9 hit、合計:811,324 hit

麻酔のない手術　9　(和) ページ10

翔Side

翔「始めるよ。固定して。
和、いくぞ。頑張れ。」

手袋をつけてカッターを手に持つと、傷口をスッと切開していった。

その瞬間、ビクッと跳ねた和の身体。
表面はある程度麻酔が効いていたのか、声を上げることはなかった。

もしかしたら意外といけるか・・・

そう思ったのもつかの間、
深くまで器具を進めていくにつれて、和の声が大きくなってきた。

雅「和、頑張れ。」

潤「頑張れ・・・頑張れ!!」

智「うまくいってるよ。順調だからね。」

翔「すぐ終わらすからな・・・
かず、痛いぞ。声出せ。」

和「うぅぅぅあぁっ!!! んんんーーー!!!!」

翔「そうだ。上手。
雅紀、もっと強く押さえて。
潤、ここの固定しっかり。」

雅「わかっ・・あぁっ!!」

痛みが強くなるだろうと思い、強く固定するように言った瞬間、
和の身体の動きが激しくなって足が動いてしまった。

慌てて器具をもった手をひっこめ、もう一度しっかり固定されるまで待つ。

翔「ちゃんと押さえて。」

潤「んっ・・ごめっ」

暴れてもいいとは言ったものの、さすがにこれじゃ手が足りない・・・

紐でしばりつけてしまった方がいいんだろうか・・・

でもそんな、無機質なもので押さえつけたくない。
せめて、ぬくもりのあるものにしてあげたい。

翔「和、頑張ってくれ・・・」

動きが止まったのを見計らって器具を進めるも、
すぐに身体が跳ねて暴れだす。

もう少しなんだ・・・あとは、傷ついた血管を結べば・・・

智「和、もう少しだよ。頑張れ。」

和「うぅぅ・・ああぁぁ!!!」

翔「くそ・・・・ダメか・・・」

「かずにぃ!!」

為す術もなく拳を握りしめていると、
髪を乱しながら息切れしたAが入ってきた。

なんで・・・Aが・・・

智「A!! 車に戻ってなさい!!」

「やだっ!! やだよ!! 私も手伝う!!」

智「ダメだ。戻りなさい。
結心はどうするの? 一人にしておくの?」

「結心は車で寝てる・・・・
なんで? どうして私は何もしちゃいけないの!?
和にぃが苦しんでるのに!! 私も家族なのに!!」

翔「A・・・・・」

Aが言うことももっともだ。

でも、Aにこんな光景を見せてもいいものか、俺らも迷ってるんだよ。

ただでさえ血が苦手なAが、
いきなり手術の現場に入って、正気を保っていられるのだろうか。

唇を震わせているAに、俺らはなかなか答えが出せないでいた。