麻酔のない手術 10 (和) ページ11
翔Side
「お願い!! 私にも手伝わせて!!」
翔「A・・・・やめておいたほうがいい・・・
Aは見ない方がいいよ。」
「どうして? 私なら平気だもん!!
ほら、見れるよ? 血だって平気だよ?」
切開によって広げられた患部を、じっとみつめているA。
平気といいながらも、明らかに瞳は揺れ、手は震えていた。
やっぱり、Aには無理だ・・・
翔「A、車に・・・」
智「邪魔になるのは、許さないよ。」
智にぃ・・・何言って・・・
智「もし無理そうだと思ったら、すぐに追い出すよ。
今僕らは和を救うことしか考えてない。
Aのことを気にしてあげる余裕はないよ?」
「わかってる。大丈夫。」
智「泣くのもダメ。
和が心配するからね。」
「はい。」
智「うん。じゃあ、一緒に和の足押さえてあげて?」
翔「ちょっと、智にぃ!!」
智「いいんだ。大丈夫だよね、A。」
「うん。翔にぃ、わたし大丈夫だから。
お願い・・・やらせて。」
俺をみつめる、力強い目。
さっきまでの不安そうな表情は消え、鋭い視線を俺に向けていた。
正直、Aがいなければ手術は続けられない。
俺は、Aを信じることにした。
翔「わかった。じゃあここ、押さえてくれる?」
「うん。」
翔「何を見ても、手を離さないこと。
力を緩めないこと。いい?」
「はい。」
翔「よし・・・・再開しよう。固定して。」
俺の一言で、みんなが全力で押さえにかかる。
俺は慎重に止血作業に取りかかった。
翔「かず、もうちょっとだから。
・・・痛いね、ごめんね。」
開始してすぐ、和は痛みに唸り始めた。
Aは一瞬耐えられないかのように顔を背けて目をギュッと閉じたが、
約束通り、手を離すことはなかった。
Aが加わったことで、しっかりと固定され、
俺の動きも一気にスピードアップする。
痛いところはできるだけ早く終わりにしてあげたい。
一秒でも早く・・・
俺は和の声に怯みそうになりながらも、
手を止めることなく、淡々と処置を進めていった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年2月14日 22時
