生きる 6 (翔) ページ30
智Side
選んだからには、やり遂げなければいけない。
個人的な感情は捨てて、医師として命を救うことだけに集中する…
そう決めていたはずなのに。
松「智、かわろう」
智「…大丈夫です…まだっ」
松「できるのはわかってる。大丈夫なうちにかわるんだ」
覚悟をしたつもりが、実際はまだ動揺が消えきっていない…
周りもよく見えていないし、自分自身のことすら…
松「よーし。到着まであと何分だー？」
僕と場所を替わった松岡先生の、胸を押す力強さとテンポの速さに、自分は力もスピードも落ちてしまっていたのだと気づく。
知らず知らずのうちに正確さを欠いてしまっていたんだ…
自分の状態もわからないまま、引き際の判断もできないなんて。
松「大丈夫か？倒れるなよ」
先生の背中から感じる気迫は一瞬たりとも緩んではいないのに、僕はそれについていけていない…
たった数分、胸を押し続けた腕や手のひらがジンジンする。
全身が心臓になったかように、ドクドクと脈打って…
乱れた呼吸で口はカラカラに乾き、わずかな唾液を飲み込もうとすると喉がくっつき息が詰まった。
それでも、まだ僕にはやるべきことがあるから。
智「っく…」
冷静になろうと大きく息を吐き出して顔を上げた直後、ドクンと心臓が跳ね上がる。
強く目を閉じ、首を振りながら胸を手で握った。
先生が力を込める度に、血の気のない顔が揺れる…
真っ赤な血に染まる青白い顔が…
翔は頑張っているのに、僕が止まっているわけにはいかない…って。
そんな決意も、途端にバラバラに砕けそうになる。
崩れかけては立て直し、崩れだしては拾い集め…それの繰り返しだった。
いざというときに、感情の制御すらできないなんて…
爪が食い込むほど、強く握った拳が震えた。
松「止血」
智「…えっ」
情けなくて、悔しくて…
自分の脚を殴って顔をあげると、目前には先生の顔…
どうして僕の方なんかを…！
と、声を出そうとしたけど…
目に入ったモニターに、鼓動の再開を示す波が見えている。
気づけば車の揺れは止まり、バックドアも開いていた。
松「すぐ診てもらえ。…できるよな？」
息を切らし額に汗を流しながら、先生は僕の頭にガーゼを押し当てた。
汗だと思っていた液体が、止まっていたはずの頭からの出血だと気づいたのもこの時。
わずかに口元を緩めながら呆然とする僕の背中を叩いてきた先生は、救急処置室に向かうストレッチャーのあとを追っていった。
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ちさ(プロフ) - ゆっかにおんさん» 5年も前から！ここ数年はなかなか更新できていないにも関わらず、こんなにも長くお付き合いいただいて本当に感謝しています、ありがとうございます！次の更新も予定通り出来ると思いますので、また覗きに来ていただければ嬉しいです (2018年10月8日 21時) (
レス) id: eb38a00876 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっかにおん(プロフ) - ちささん» お返事ありがとうございます。いつから読んでるか振り返ってみたら、初めて読んだのはお兄が…のPart5、気管支喘息でした。あれの更新って5年前なんですね笑それだけ、更新を続けてるって本当に尊敬です。更新され続ける限り必ず見ます。頑張ってください。 (2018年10月7日 20時) (レス) id: 2545fae9a1 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - ゆっかにおんさん» お忙しい中、読んでいただけていることもとても嬉しいです。またお時間のある時に、私のお話を息抜きとして利用していただければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします (2018年10月7日 19時) (レス) id: eb38a00876 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - ゆっかにおんさん» こんばんは、ゆっかにおんさん。そ、そんな身に余るお言葉を…ありがとうございます(;_;) 私は昔から文章を書くのが苦手で、いつも書いては消してを繰り返し『これで伝わるだろうか…』と不安になったりもするのですが…そのように言っていただけて本当にホッとしました (2018年10月7日 19時) (レス) id: eb38a00876 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっかにおん(プロフ) - この作品いつから読んでるだろう?それくらい大好きです。ココ最近忙しくてこまめに見られてなかったけど、表現がすごく丁寧だし、にぃやまま、ゆいちゃんたちの心情もすごく分かりやすくて読みやすいです。また、見に来ます。次の作品も楽しみにしています。 (2018年10月7日 2時) (レス) id: 2545fae9a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちさ
| 作成日時：2018年5月5日 22時
