手のかかる後輩 7 (翔) ページ40
松岡Side
松「右手を上げて。動くなよ！
はい下げて。そのままじっとしてな」
不思議そうに俺に体温計を手渡してきた翔は今、その顔を動揺の表情に変えて固まっている。
脇に体温計を挟むため服の中に手を入れた時、俺がちょっと睨んでやったからびびって何も言えなかったんだろう。
隠そうとするからだ。
俺を騙そうなんて100年早いんだよ。
松「鳴ったか？」
翔「いや、ちょっとエラーが…」
松「悪あがきをするんじゃない。とりあえずこっちきてみ？」
エラーなどと嘘をついて電源を切ろうとするから手から体温計を抜き取り、休憩室のソファーにつかまえた腕を引っ張ってきて座らせた。
もうどうにもならないとわかっているだろうに。
それでもまだ諦めていないのか、座った拍子にグフッと口を押えた翔に苦笑した。
松「咳、我慢しなくていいから。
痰が絡んでるな、呼吸しづらかっただろ」
どうしてわかったんだとでも言いたそうな顔で俺を見つめてくるもんだから、今度は溜息まで出てしまった。
わからないはずがない。
理由を一つずつ言っていかないと納得できないか？
松「普段より呼吸が浅くて回数も多い。
昨日一日じゃ治らなかったんだな」
咳が出てしまいそうで、深く息が吸えなかったか。
だから不自然な呼吸になるんだ。
松「頭痛、酷いならちょっと横になってな」
翔「だ、大丈夫です。頭痛は…別に…」
松「今更嘘をついて何の意味があるんだよ。
優しいって評判の翔先生がそんな怖い顔してていいのか」
本人は無意識なんだろうけどな。
出勤してきた時から眉間にシワが寄りっぱなしだった。
それを伸ばすように眉と眉の間を人差し指で強めに撫でてやると、翔はハッとした表情をした後に、肩を落としてわかりやすくしょんぼりとしている。
松「熱は？昨日からか？」
翔「…い、え」
松「あのな、翔…もう少し、上手に嘘がつけるようになろうな」
完全に目が泳いでいる。
昨日謝罪の電話がかかってきたときも、声に元気がなかったしな。
その時に体調のことも聞けていたらよかったんだが…
ちょうど忙しいときで、すぐに電話を切ってしまっていた。
松「これ以上、酷くならなきゃいいんだけどな…」
熱があるのは、見た瞬間から疑っていた。
わずかに背中が丸まっていて、呼吸のたびに肩が上下していたことに違和感を覚えたからだ。
身体が弱っているときは、少しの動作でも体力の消耗が激しい。
出勤するだけで疲れてしまったんだろうな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琴子(プロフ) - また長くなっちゃった…。読んで頂けるだけでうれしいので、この続きはPart18で。お返事あるとヤッター！って喜んでる私ですが、じゃないと終わらない…。嬉しい(*^^*)けど！また(^-^)/ (2016年11月9日 17時) (
レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - って、ちささんの作品ファンなら皆さんそうだと思います。それだけ好きです。次回からはPart18との事。おめでとうございます＼(^o^)／こちらこそ、毎晩の更新にお返事ありがとうございました。必ず、次回も来ますからね、楽しみにしてます！ (2016年11月9日 17時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - またお返事頂いて嬉しいです！ びっくりしましたぁ？当然です〜。な〜ん〜て。正直、言えば忘れてるとこもあるかも知れませんが、誰のお話ってなれば、今までのお話が頭に浮かぶしさらにはその中の言葉まで。 それだけハマりすぎてます。 (2016年11月9日 17時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 琴子さん» そうなんです！前回と少し繋がっていましたので、白衣のところはあえて入れていたシーンだったんです。コメントを読んでびっくりしました。気付いていただけて、とても嬉しいです。毎日読んでいただき、ありがとうございました！次回もまた読んでいただけると幸いです (2016年11月9日 0時) (レス) id: 11255fdd0d (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 更新もお返事も！とっても嬉しい(*^^*)ありがとうございます！ここんちのやつの謝るとこ。妹のエピソード。妹好きの私には(T_T)松岡先生の白衣今度は翔兄の為に。物語がつづいてるって感じられました(#^.^#)またほんとに気軽にお邪魔しまっす！また(^-^)/ (2016年11月8日 16時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさ
| 作成日時：2016年8月7日 1時
