パパが治してあげようね *ARS* 13 (ページ27)

今日:2 hit、昨日:18 hit、合計:605,315 hit

グラグラ　1　(結心) ページ27

ASide

「ね、私たち夫婦だと思われてるのかな」

隣で真剣な顔で腕組みをしている兄にコソッと話しかけてみる。
やっぱりというか想像はしていたけれど、「そんなことないでしょ」と振り向きもせずに軽く返された。

そんな彼が夢中になっているのは、園児が作った数々の作品たち。
幼稚園で開かれている展示会にやってきた私達は、娘の作品が飾られているホールの中をゆっくりとまわっていた。

「すげぇな～…5歳でこんなの作れちゃうんだ…」

卵の殻を使ったモザイクアートを見つめながらボソッと呟いたのは、私と一番歳の近いお兄ちゃん。

5人の中でも雅にぃと並んでおしゃれさんなこの人は、「ゆいのためにも恥ずかしい格好じゃ行けないな」って、細身のパンツにシンプルなシャツとジャケットというスッキリとした服装を選んでくれた。

色はモノトーンで落ち着いていて、普段家では垂らしている前髪もワックスで軽く上げられている。

潤「いっその事、ラブラブな夫婦演じてみる？」

「わっ、ダメだよ、本当に勘違いされちゃう」

後ろに回した手で腰を引き寄せてきた潤にぃは、いたずらっ子の顔してニヤリと笑う。

ただでさえ目立ちやすい顔立ちなんだから。
しかもホールにはお母さん同士で来ている人ばかりで、男性ってだけでも目に止まりやすい状況。

その上こんなスタイルの際立つ服装でキラキラオーラを振りまいていたら…ね。
本人にはそんなつもりは全くないんだろうけど(笑)

潤「なんかお父さん少ないね。見に来ないもんなのかな」

「運動会なんかと違って、カメラマンになる必要もないもんね」

潤「確かにな～。自分の子供の作品だけなら、家に持ち帰った時にでも見れるし」

そういいながらも「他の子の作品を見るのも楽しいのにな…」と渋い顔で呟きながら、『この子のはこういうところが素敵なんだ』って色使いや子供ならではの創造性を一つ一つ力説してくるところなんかはさすが真面目で熱い人。

でもそんな潤にぃにも可愛い一面はあって…

潤「ねぇ、A。俺、髪の毛直ってる？」

周りにチラチラと見られているのに気づいたのか、寝ぐせがついていないかペコリとお辞儀をして後頭部を見せながら聞いてくる。

今日は珍しく寝坊しちゃってね、髪の毛を直す時間がないからって、寝ぐせを帽子で押さえながら家を出て、車を降りる前に前髪だけ軽くセットしたの。

寝ぐせって言っても、元々少しハネてただけだから。
大丈夫だよ、いつも通りキマってる。