肋骨骨折 9 (潤) ページ47
潤Side
智「大丈夫？一回身体起こそうね」
上から覆いかぶさるように伸びてきた両腕を、ぼやけた目でジッと追う。
咳き込む度に痛みが走る胸は、どう動いても激痛からは免れないような気がして。
それが怖くて寝返りさえうてなかった俺は、二人の手を借りるしかなかった。
翔「俺後ろから支えてるから」
智「ん、お願いします。ゆっくり起こすからね…せーの」
長袖のTシャツを着ている身体は薄くて非力そうに見えるのに、背中と首の裏に入れられた腕はガッシリとしていて安心感がある。
慎重に起こすためなのか、抱きしめるように身体を密着させていたから余計に。
智「よし、いいよ。ごめんね、痛かったでしょ。
そのまま翔にもたれててね」
痛かっただろうと言われて初めて気がついた。
さっきまで頭の中は『痛い』でいっぱいだったのに。
智にぃの腕の中にいた時はそうじゃなかった。
この人って隠れ筋肉質だよなぁ…とか。
鼻に触れるTシャツからいつもの優しい香りがするなぁ…とか。
そんなことを考える余裕さえあった。
まだ咳き込めば痛むんだけど、肌に感じる体温に安心したからか、幾分楽になった気がする。
智「ちょっとバンド外すね。痛い？」
潤「んーん…」
翔「嘘。今身体に力入ったもん。
少しの間だけだから。我慢な？」
しばらく続いた咳がだいぶ治まってきたころ、聴診のために胸に巻いていた固定用のバンドを外された。
俺はもう、咳と痛みに体力を奪われてグッタリだったから。
大人しく翔にぃの胸に身体を預けて、ジッとしていることにした。
智「楽に呼吸しててね。そっとやるけど痛いかな…」
翔「我慢できないほど痛かったら俺の手握りな？」
左手は聴診の邪魔にならないよう服をまくり上げ、右手は俺の手をギュッと握ってくれる。
心配して診てくれるのはありがたいけど、でも…。
お腹も胸も丸見えになっていると思うとちょっと恥ずかしい。
智「音だけじゃなくて、目で胸の動きを見ておくのも大事なんだよ」
そんな俺の心を読んだのか、聴診器を手にしたほんわかお兄ちゃんがニッコリ。
何も言い返せなくなって小さく頷くと、後ろから「良い子だな〜」と笑われた。
智「子供じゃないって怒られちゃうね(笑)」
翔「ごめんごめん、つい。
それ終わったらさ、上だけでも着替えよっか。ね」
汗ばんだ背中や首筋にペタペタと手の甲を当ててくる翔にぃに、またコクンと頷く。
こんなに優しくしてもらったら、怒る気なんておきないよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 557人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
