パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ36)

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夏の思い出　12 ページ36

翔Side

なんだか少し気持ちが悪い。身体がダルイ。

そう感じ始めたのは、準備が終わって肉を焼き始める頃だった。

久々に炎天下の作業をしたのが悪かったのか。
ちょっと動いただけでも不調をきたす身体に嫌気がさしながらも、これからが楽しむときだと、身体からのSOSは気づかないふりをすることにした。

智「おかしいなって思ったのは雅紀が火傷をしたころなんだけど。
もしかしてそれより前から?」

俺の目の前にしゃがみこんだ智にぃが言った言葉に、ドキリとする。

まさか気づいていたなんて。
できるだけ笑って、できるだけいつも通りにしていたはずなんだけど。

もちろん、無理に笑っていたわけじゃなくて、皆といると本当に楽しいから。
おかしなところなんてなかったと思うんだけどな…

翔「不調を感じたのは、夕方からだけど…
でも大したことないんだよ。ホントに。心配するほどのことじゃないから…」

智「本当に?お酒も飲まないし、焼くだけでほとんど食べてない。
無理して倒れないかって心配だったんだから」

まさか…そんなところを見られていたなんて。

飲まない食べないって言うけど、それなりに飲酒してたし、野菜や魚介なんかは結構つまんでたんだ。

俺はバレてないと思ってたから気づかなかったけど、今思い返せば智にぃはずっと俺のことを気遣ってくれてたんだよな。

翔「じゃあ…雅紀が火傷したとき座って待ってろって言ったのも…
開けたけど余っちゃったから飲んでって、スポーツドリンク渡してきたのも…」

智「気休めにしかならないと思ったんだけどね。
でも、何もしないよりはマシだから。
みんなにはどうしてもバレたくなかったんでしょ?」

俺ら以外の声は聞こえない、寝静まった部屋で。

気持ちよさそうに寝息を立てる弟達を起こさないよう、空気の多く混じった静かな囁き声が俺の耳に入ってくる。

「みんなが寝てから、話を聞こうと思ってたんだ」。
「気持ち悪くて寝れないでしょ?」って。

なんでもお見通しの智にぃがおでこに手を当てながら聞いてくる。

智「熱はないみたい。
今日暑かったから、熱中症にでもなっちゃったのかな」

翔「自己管理が…できてなかったから…
ごめん…心配かけて…」

帽子もかぶらず水分補給もしないで作業してた俺が悪い。

智「ううん。ありがとね、翔」

そんな俺の中に入ってくる声が、なんだか涙腺を刺激する。

「ありがとう」って智にぃの言葉の意味を考えて、またジワリと視界がぼやけていった。