パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ34)

今日:4 hit、昨日:17 hit、合計:690,146 hit

夏の思い出　10 ページ34

智Side

いくら家だからといっても、こんなふうに潤先生に診てもらうのは僕だって緊張する。

雅紀も目がきょろきょろさせて、落ち着かないみたい。
どこを見ていいのかわからないんだろうね。

だからさ、こういうときは。

智「「大丈夫だよ。怖くないよね～」

ほっぺたに手を当てて僕の方に向かせ、話しかけてあげればしっかりと目が合う。
目が合ったら、前髪をかき分けるように頭をなでなで。それだけ。

昔からだけど、雅紀は頭に触れてあげると安心するみたい。

潤「ちょっと口開けるね。
痛かったら、んーでも、うーでも言って?」

口に指を入れて広げながらいつもより明るい声が出してくれているのは、きっと潤の気遣い。
そしてそれは僕にも。

ほっぺたに当てた手で少し上を向かせ口の中に光を入れてあげていると、こっちに向かって笑顔を見せてくれる。
「ありがとう智にぃ。すごく見やすい」って。

潤「あぁ…皮むけちゃってるね。舌は痛くない? べーしてみよっか」

怖がりさんが泣いちゃわないように、口の中を滑らせる指の動きは優しくて。

機嫌を見ながら、火傷の具合も確認して、僕への感謝も忘れない。
いろんなところに気を配ることができる潤はとっても器用だ。

本人はどうしたらいいのか戸惑っちゃうなんて言ってたけど、雅紀みたいな怖がりさんの扱い方、十分上手だと思うよ(笑)

雅「んんー」

潤「ごめん、痛かった?」

雅「ん…いひゃい…」

潤「ごめんね。上顎のところ、もう一回見せて?
もう少し、ね。頑張って開けて…、あー」

やっぱり口の中をいじられるのは気持ち悪さがあるみたいで、ずっと顔をしかめていた雅紀だけど。それでも、潤の優しさのおかげか一度も嫌だとは言わなかった。

途中、訴えるような目で僕を見つめてきた時もあったけどね。
「えらいよ」って、「もうちょっと我慢ね」って言えば、コクンと頷いてくれる素直な子(笑)

慎重派の潤が丁寧に診てくれたおかげで少し時間はかかっちゃったけど、その分、先生の言葉には安心感がある。

潤「大丈夫、数日でよくなると思うよ。薬も飲まなくて平気。
痛みが引かなかったら、俺がいつでも診てあげるから。よし、おしまいにしよう」

手袋を外した潤は、僕が診察前に雅紀にしてあげたのと同じように、そっと前髪に手を伸ばした。

頭ポンポンして、「汗かいたね」って潤におでこを拭いてもらっている雅紀は弟のよう。

でもいいよね。
僕はこの家の、この関係が、あったかくて好きなんだ。