パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ33)

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夏の思い出　9 ページ33

潤Side

潤「口にどんぐり詰め込んだリスみたいになってる」

今にも溢れ出しそうなほど口に水を入れた雅リス。

それを窓の外から見た翔にぃが吹き出していた。
心配して覗いてくれたんだろうね。

雅リスは何を思ったのか、翔にぃの方を向いて何か喋ろうとするもんだから、口から水がドバーっと出て大洪水になっている。

その状態で喋ったらそうなることくらい想像ついてよ(笑)

智「あれ?なんでこんなに床が濡れてるの?」

潤「あ、ごめん。今拭くから」

翔にぃが外で笑っているうちに、智にぃが家の中に上がってきてくれた。
まったく、翔にぃは見てるだけでなにもしないんだから。

…なんてね。
きっと外では「俺が行くよ」「いいよ、僕が行くよ」って会話があったはずなんだ。

話し合いの結果、智にぃがってことになったんだろうけど。
この人は自分が行くって言ったら譲らないから。翔にぃが折れたんだろうな。

潤「ごめんね智にぃ。今日全然ゆっくりできてなくて」

智「そんなことないよ。十分楽しませてもらってるから。
あ～首元まで濡れちゃってるね。ほら雅紀、うーってして?」

指示通り素直に上を向く雅にぃを「いい子いい子～」って笑いながらタオルで拭いてやっている智にぃ。

思えば、雅にぃが目が痛いって騒いでいた時も、ゆいが指を火傷した時も、ずっと智にぃが動いてくれてたんだよな。

仕事の後だから休ませてあげたかったけど、残念ながらそれは叶っていない。

雅「んー…なんでこんなに痛いの～」

智「まだ痛い?広く火傷しちゃったのかな。
潤に診てもらったらもう一回冷やそうね」

それでも、嫌な顔ひとつせず笑顔を絶やさない智にぃは本当に優しい人だと思う。

小さな頃からずっと。
絶対の安心感があるから、雅にぃも痛みに顔を歪めながらも落ち着いていられるんだ。

潤「じゃ、口の中みるから…って、あれ(笑)
泣いちゃいそう?怖がんないでよ、雅にぃ」

床にあぐらをかいた俺の脚の上に頭がくるように雅にぃに寝転がってもらって、その横でペンライト持った智にぃがスタンバイ。

そこまではまだよかったんだけど、俺が手袋をはめて顔を覗きこんだ時には泣きそうな顔になっていた。

こういうの苦手だもんね。それはわかってる。
だから智にぃもずっと優しく声をかけてくれていたわけだし。

智「大丈夫だよ。泣かないよね～」

そんなとき頼りになるのはやっぱり智にぃで。

ニコ～っていつもみたいに笑うだけで、雅にぃの表情が緩むんだ。