小学生のまーくん 4 (雅) ページ4
雅紀Side
「まーくぅーん!!」
ブランコに座って靴で地面を蹴っている時、聞こえてきたのは声変わり前の高く透き通った少年の声。
子供っぽい無邪気さもあるのに大人のような落ち着きも感じる、不思議な声だった。
遠くから声をかけられても、この人だけはすぐに気づいてたな〜。
智「まーくん、みっけ。
今日は検診の日だから休み時間に集合って言ってあったのに〜」
雅「そんなの知らないもん…」
嘘。本当は知っていた。
ただ、それらしい言い訳が思いつかなかっただけ。
智「みんな待っててくれてるから行こ?」
雅「…やだもん。ブランコしたい」
智「えー。でもまーくん、全然楽しそうじゃないよ?」
この頃から智にぃは鋭かった。
俺の言い訳はほとんど通用しなかったよ。
智「いこーよ。ね?」
子供らしいふっくらとした腕をいっぱいに伸ばして、丸みのある指を思いっきり開いて、差し出されたのはお兄ちゃんの温かな手。
決して強制しない、ただただ待ち続けてくれる優しさは、この頃から智にぃの中にあった。
それに引き寄せられるように手を繋ぐ。
瞬間包まれる温かさに心底安心するのも、この頃から同じだ。
智「お〜てて〜つないで みな〜かえろ〜
…あ、違った。今まだ夕焼け小焼けじゃないや」
校舎に戻る途中、校庭の真ん中できれいなボーイソプラノが響く。
ふにゃって笑いながら空を仰いだのを見て俺も倣うと、目にはいったのは一面吸い込まれるような青だった。
全てを包み込むような透き通ったブルー。
あぁ…この感じ、智にぃみたいだ…。
そう幼ながらに思ったことは、今でもよく覚えてるよ。
智「ただいま〜」
和「あ!!まーくんきたー!!」
潤「さとにー、ジュン待ってた!!いー子してた!!」
智「ふふ。潤くんいい子〜」
和「あっ、カズも、カズもっ」
智「和くんもいい子〜」
手洗い場の前に到着するや否や、うちのチビちゃんズがぴょんぴょん飛び跳ねながら手に持っていた歯ブラシを振り回す。
この頃はまだ名前の呼び方も可愛かったね。
お互いに照れが生じるまでは、ずっとこの呼び方だった。
翔「まーくん、にぃが歯磨きしてあげよっか?」
雅「やだよ、しょーちゃん!!」
翔「んもー!!『にぃ』の方がいいのに!!」
智にぃと翔にぃは俺たちの面倒をよく見てくれていた。
長男に任せっきりだった翔にぃもだんだんと兄としての自覚が出てきて、この頃はよく『にぃ』って呼ばれたがってたっけ。
まぁ俺は『しょーちゃん』派だったけど。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
