ガラガラ声 11 (和) ページ23
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「麻酔のスプレーだから。しておいたほうが楽に出来るよ」
「だってそれ、気持ち悪いんだもん」
「一瞬だろ?やらないほうが辛くなるから頑張っとこ」
診察室の中からは騒がしい声が聞こえてきている。
予想通りというか…いつも通りというか…
中の様子を想像して自然と笑みがこぼれた。
和「んっ、んー」
智「気持ち悪い?ちょっと我慢してね」
音を立てないようにドアを少しだけ開けて中を覗くと、ちょうど鼻の中にスプレーをしているときだった。
後ろから手を回して自分に密着させるように頭を押さえている次男に、手際よく処置をしていく長男。
やっぱり、予想通りだ。
おでこに当てられた手は、ガッチリ固定をしているのに強引さは感じられない。
顎からほっぺたにかけて添えられた手は、小さくトントンと動いているようだ。
毎度思うことだけど、この兄弟はここが他の人とは違うんだよね。
なにをするにも手の動きが優しくて安心する、そんな感じ。
智「ちゃんと前向いててね。入れるよ〜」
和「いっ、いたい!!痛いー!!」
智「痛い?鼻で息してごらん?」
翔「落ち着いてみ、和。そんなに痛くないはずだよ。
心臓バクバクになってるから。な、深呼吸して」
いくら細いファイバースコープとはいっても、異物が入ってくるんだから違和感は感じるもの。
痛みはほとんどないはずだけど、そこに関しては人それぞれだから。
本当に強い痛みを感じているのだとすれば挿入を中止したほうがいいかもしれないけど、今回はその必要はなさそうだ。
智「痛いところ終わったかな。おえってなることもないね。
思ったより大したことないでしょ?」
翔「ほんとだ、楽に出来たね。あとは抜くだけだからな〜」
兄ちゃんの声に落ち着きを取り戻したのか、目をつぶって唸りながらも大人しく検査を受けている。
あいつは痛みに弱いし、本当に痛かったらもっと騒ぐだろうから(笑)
両手は宙に浮かせたまま固まってるけど、固定役の兄ちゃんが押さえなくても検査の邪魔をすることはないし、あいつにしてはよく頑張ってるよ。
智「はーい、抜けたよ〜。おしまーい」
和「んー痛かった…」
智「ふふ、痛かったね。よく頑張りました」
どうやら無事に検査は終了したようだ。
何かあった時のために念のため待機してたけど、俺の出る幕はなかったね。
さ、それじゃあ本当に帰るとしましょう。
翔「あれ?帰っちゃうの?」
え?
智「斗真、入っておいで?」
ええ?
なんだ、俺の存在バレてたの?
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
