パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ21)

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ガラガラ声　9　(和) ページ21

翔Side

職場を出てクリニックに向かう途中、智にぃからメッセージが届いた。

それを見て「よかった、これなら時間もかからずに終わりにできるな」って安心。

和の機嫌によっては5分で終わる検査が15分にも30分にもなったりするから。
早く終わるならそれに越したことはない。

なのに、なんでかな。

和「やだ。もう知らない。帰る」

翔「え? いや、待て待て。どこ行くの」

『素直に検査を受ける気になってくれた』んじゃないの?
『いい子に耳鼻科までついてきてくれた』って確かに見たぞ?

智にぃの報告通りであれば、すでに診察の準備が整ってる頃だと思ってたんだけど。

なのに。診察室に入ろうと扉を開けた時、はち合わせるように俺の方に向かってきた和はプンスカしてる。
こりゃ検査をやるどころじゃなさそうだ。

翔「どした? ほら、とりあえず部屋に戻ろう」

和「やだって。離してよ」

翔「わかったから。ちゃんと歩いて?」

診察室を出ようとする和をクルッと半回転させて後ろから肩に手を置き、少し強引に押してみる。

それでも脚を突っ張って動こうとしなかったから、脇に手を入れて浮かせてやった。

和くらいなら、簡単に持ち上げられるんだから。
俺の筋肉も伊達じゃないんだよ。

和「翔にぃ、バカ。脇の下痛い…」

翔「ごめんよ。和が動かなかったから。
で、智にぃさ。そんなところで笑ってないで状況説明してよ」

持ち上げた時に手が食い込んだところが痛かったって。

脇を押さえながら不貞腐れている和はベッドの端に座らせておくとして、俺は智にぃに理由を聞くことに。

医師用のイスに座って俺らのやりとりを見ていた智にぃは、「翔は力持ちだね～」って笑ってる。
そんな余裕があるんだったら手伝ってくれっての(笑)

智「本当は斗真が診てくれるはずだったんだけどね。
それを和が知らなかったみたいで。
僕に診てもらうんだと思ってたんだよね? 和」

和「だって…。智にぃ嘘ついた…」

智「嘘をついたつもりはないんだけどな～
でも、ちゃんと言ってなかった僕も悪いね。ごめんね」

なるほど、それで怒ってたのか。

斗真にはちゃんと謝って帰ってもらったらしいんだけど、一度損ねた機嫌はなかなか元に戻らないらしい。

和「…やっぱ帰る」

翔「おーっと、それはダメー」

急に立ち上がって逃げようとする和を、お腹に腕を回して後ろから捕獲。

そんなジタバタしたって、翔にぃの筋肉からは逃れられないんですよ。
諦めなって。