パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ19)

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ガラガラ声　7　(和) ページ19

翔Side

どんなに智にぃが腕の良い医者だからって、なんにもない自宅で暗く曲がりくねった先を見るなんてできっこない。

それでも見えるところまで見ておこうと、口開けたまま声出してもらったり、舌引っ張りだしてみたりしたんだけど…

心配だからって、ついつい慎重になってしまったのは失敗だった。
いろいろやり過ぎ。時間のかけ過ぎ。

まず口の中触られること自体、大の苦手なんだから。
そりゃ不機嫌になるよな…

翔「ごめんって。もうやらないから」

和「やだ、疲れたもん…嫌い…」

翔「はい。反省してます。
やり過ぎたのは認めるから、嫌いだけは撤回して? ね、和。ね?」

これ以上悪い雰囲気にしてはいけないと思って、プクッと膨らんでいるほっぺたをツンツンしてみた。

口の中の空気がプシュっと出たところで腕をぺシリと叩かれてしまったけれど、逃げてはいかないから本気で怒っているわけではなさそうだ。

智「和、こっちおいで?
翔にぃのところにいると何されるかわからないぞ～」

翔「ちょ、智にぃ酷い。
大丈夫だよな、和。俺と一緒にいようよ」

和「んー…こっちがいい」

智「ふふ、いらっしゃい」

少し離れていたところで床に座っていた智にぃの隣に、肩を組んだ俺の腕からスルリと抜けだした和が腰を下ろした。

なんだよ、そんなぴったりくっつきやがって…

翔「くっそぉ…」

そうつぶやいた俺に「んふふ」って二人がシンクロして笑う。
和が笑ってくれたなら…まぁいいか。

でも智にぃだって俺と一緒に診察してたんだから。
途中から補助役にまわってもらったから、直接診てたのは俺だけど…

それでも智にぃばっかり好かれるのはズルいって。

翔「いーよいーよ。
もう俺、明日ついてってやんなーい」

見える範囲には異常はなかったけど、やっぱりちゃんと検査をしておいた方がいい。
そういう結論になって、明日耳鼻科に行くことになっている。

俺もついていくって約束したけど、もう知らないもんね～

なんて、拗ねてみたけれど。
どうせ「翔にぃなんていらないもん」とか言われて終わるんだろうな。

和「えっ…嫌だ。なんで?」

と、完全に油断してたところに予想外の反応。
驚いて「ふえ?」と変な声が出てしまった。

智「大丈夫、翔にぃは本気で言ったわけじゃないからね」

翔「ごめんごめん、冗談だからな」

そうだった。不安でいっぱいなときは、冗談は通じないんだっけ。
泣かせたらまた嫌いって言われちゃうよ。