夏の思い出 1 ページ25
雅紀Side
「ねぇ、まー。かずくんどこー?」
鼻をズッと鳴らしながら俺にしがみつき聞いてくるのは、我が家の姫、ゆいちゃん。
小児科へと続く廊下を、グズグズのこの子を抱きながら歩いているけれど。
別にゆいちゃんが風邪を引いてここに来たわけではない。
もちろん俺もすこぶる元気。
パワー有り余りすぎて今すぐ踊りだしてしまいたいくらい(笑)
じゃあなんでこんなところに来たかって言うと…
雅「え、和いないの? 智にぃのとこかなぁ…。
ありがと。ちょっと内科行ってみるね」
診察時間が終わり静かな和の診察室を覗いてみたら、看護師さんが「先生ならスキップして出て行っちゃいましたよ」って。
今日は診察が午前だけの日。
けど、仕事が早く終わったからテンション上がってるわけ…じゃないよね。
我が家の夏の大イベント。
それでテンションが上がっていたに違いない!!
結「うぅ〜…かずくんどこぉ〜」
雅「よしよし、どこ行っちゃったのかね〜」
和くんに会いに行こうと言って連れてきちゃったから、なかなか会えないことが不満みたいでご機嫌斜め。
しかもここは大嫌いな病院。
診てもらうわけじゃないから大丈夫って言っといたのに、入った瞬間泣きだしたから焦っちゃった。
機嫌が悪いのは会えないからっていうより、泣いたことを引きずってるって感じだね。
雅「あっ、見てゆいちゃん。和くんいたよ」
結「ん? あーいたー」
内科の診察室の前で和発見!!
少し離れたところで見つけたから、まだ向こうは俺らのことに気づいていないみたい。
雅「もう少しここで待ってようか。
和くんのお話が終わるまでシーしてよう?」
お母さんらしき女性と手をつないでいる小さな子の前にしゃがみこんでニコニコしてる和先生。
あの女の子はきっと、和の患者さんだね。
親しく話してるし、和にも慣れてる。
内科にいるってことは、お母さんが受診してたのかな。
こうして家族でここに掛ってくれるのは嬉しいね。
和「ちゃんとお腹しまって寝てね。じゃーねー。ばいばーい」
雅「かーずセンセっ、ボク頭いたーい」
和「え? …って、なんだ雅にぃか」
親子とバイバイしたのを見て猫なで声を出しながら近づいてみたら、驚いた顔をした和に鼻で笑われた。
雅「なんだってなんだ!!」
和「ゆいちゃ〜ん、来てくれたの〜? ありがと〜」
雅「もういいもん…俺だって、せっかくきたのに…」
なんだよ、俺のこと無視しやがって。
もう許してやんないもんね。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
