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伍拾の目 ページ50

それは初夏の暑い夜の事だった

あまりの暑さに戸を開けて眠りにつく双子の兄弟の寝息も匂いも全てが外に漏れ出し風に運ばれる。


「人間の匂い…ここか」


月の逆光により顔も見えぬそれは眠りにつく人間に襲いかかった。

鎌のような爪でいとも簡単に腕を切り落としてどくどくと血を流した。

悲痛の声に反応して飛び起きた弟は何が何だかわからなかった。


「うるせぇ騒ぐな…どうせお前らみたいな貧乏な木こりは何の役にも立たねぇだろ

いてもいなくても変わらないつまらねぇ命なんだからよ。」


生まれてから一度も感じたことの無い腹の底から吹きこぼれる激しい怒りに、先程まで呆然としていた弟はとてつもない咆哮を口から発した。

今まで見せることのなかった獣の彼は鬼に襲いかかりありとあらゆる方法で鬼を痛めつけ、終いは陽光で灰にした。

そんなの弟には関係なかった先程まで左腕を切り落とされた兄が気になって仕方がなかった。

重たい体で這いながら家に入れば兄はまだ生きていた。


「神様…仏様……どうか、どうか弟だけは助けてください。

弟は…俺と違う…心の優しい……子です」


兄は自分が弟の邪魔をしていたことをわかっていたのだ。

誰かのためなら本来の力を発揮する選ばれた人間であることを


「わかっていたんだ…本当は

無一郎の…無は……




“無限”の“無”なんだ」


本当は自分こそ誰の力にも慣れない“有限”の力しか使えないこぼれ落ちた人間であることをわかっていた。








本当にそうだろうか?






『どれだけ善良に生きようが神も仏も守ってはくれない…ならば俺がお前らを拾う。


まあ俺は“柱”だけどな。』

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雪見だいふく - これから読み始める者です。私は成り代わり系はあまり読まないタイプですが、夢小説を探していた時タイトルからして面白そうだと思い誰の成り代わりだ〜?と思って開いた瞬間サイコロステーキ先輩の顔面が出てきてこれは面白いと確信しました。更新頑張ってください (2022年12月14日 19時) (レス) id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
猫猫 - あの〜すみません…お館様の妻の名前ってあまね様だと思うのですが……とっても面白いです!!!!!これからも頑張ってください!!!!!! (2022年7月26日 7時) (レス) @page16 id: f29fbd18bf (このIDを非表示/違反報告)
猫さくらもち - サイコロステーキ先輩の小説だと、、、!?!?え?作者さんの着眼点が素晴らしすぎる!! (2022年7月17日 7時) (レス) id: f692ce80b7 (このIDを非表示/違反報告)
宮 村 。(プロフ) - 初コメ失礼致します!すごく好みすぎる作品です…続編楽しみにしております!! (2022年7月12日 15時) (レス) @page50 id: e0cd2bb1c0 (このIDを非表示/違反報告)
本が大好きなハリネズミ(プロフ) - サイコロステーキ先輩の成り代わりの小説があるなんて…!とても面白いです、これからも頑張ってください! (2022年6月18日 23時) (レス) id: 73a477d291 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:またたびはまた | 作成日時:2022年5月24日 13時

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