死亡確定キャラに成り代わったら誰だって凹む

肆拾玖の目 ページ49

険しい山道を登って隣の隠をちらりと見た

黒い衣の隠が背負うのは白樺の精霊と見間違える程に美しい一人の女性


『もう少しです。この道の先に目的地が…！』


なぜ山登りをしているのかと言うと、先日課せられた任務がこれだからだ。

なんやかんやで御館様は奥さんであるあまね様が大事なのだ。

就任したばかりだとはいえ柱を護衛につける程なのだから心配なんだろう。

ようやくたどり着いた先にあるのは一件の小屋

外で薪を割る少年はこちらの気配に気づいて小屋の中に入ったと思えば、先程の少年と全く同じ顔の少年が前に立ってこちらを睨みつけていた。

これが時透無一郎と、その双子の兄である時透有一郎なのか

そっくりだよな…まあ双子だかそれもそうだよな

すると隣にいたあまね様はゆっくりと少年2人に近づき丁寧に挨拶をしていた。

後ろにいる隠には帰る体力を少しでも増やせと言って竹筒に入った水とおにぎりを懐から出して渡した。


｢ぅあ……ありがとうございます藤柱様ぁ…！｣


おい泣くなよ俺が泣かせたみたいじゃないか

ため息をつきながらちらりとあまね様を見る

時透有一郎の方はあまね様の言葉に顔を顰めていた。

やはり剣士の子孫である事に頭が追いつかないのだろう。

それか鬼殺隊の勧誘に対して嫌悪感などがあるか…でも俺は見ていた


唯一の血族である双子の弟の手をしっかりと握っていたことを


｢出ていってくれ…二度と俺達に関わるな！｣


これ以上の刺激はまずいな

俺は素早くあまね様の斜め後ろに立つとここは引きましょうと言った。

あまね様は去り際にまた来ますと言って俺と隠に帰りの支度を命じた。


言葉通り、俺達は何度も双子の家を訪れた。


ある日はあまね様に水をかけようとしてきた為俺が身代わりになってビシャビシャになった時もあったけど風邪はひいてないから大丈夫

また今日も追い出された

とぼとぼとまた断られてしまったねみたいな雰囲気が漂う帰り道、俺は少し考えた。

ここに藤の香を撒くべきだ。今までは俺が頻繁に来ていたから何とかなったけどこれからは夏になる。

暑くて戸を開けながら寝ることもあるから人間の匂いが外に漏れてしまう。

それか藤の香以外の対策をするべきか？


『(ちょっとだけ…勝手な行動をさせてもらおう。)』


おそらく俺が考えた中ではこれがマシな方法だと思う

あまね様や御館様には申し訳ないんだけどな

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