死亡確定キャラに成り代わったら誰だって凹む

肆拾弐の目 ページ42

どうやら個人的機能回復訓練をしていたようで、無理やり義手に木刀を持たせて呼吸を使った型の練習をしていたようだ。

俺が来たことにより訓練は中断、休憩がてら義手の点検を始めることにした。


『良かった…糸の巻き取り部分もバネも壊れてない。

この義手は日常生活に置いての動作に支障が出ないように作られたものであって戦いには適していません。

それにあなたは……俺のせいで引退せざるを得ない状況になったんですから。』

｢あらあらごめんなさい…頭ではわかっていても体は認めてないみたい。

どうしてもなにかあった時のために備えて起きたいって思えてしまうの。｣


無理な使い方をした事により軽い説教をしたのが原因なのか少し元気がない。

そこまで言うつもりは無かったのだが

でもこれを機会に普通の女性らしい生活を……ってこれでは女性差別になる。


『そうだ…義手を使いこなせるカナエさんにこれを贈ります。』

｢……組紐？｣


まあこの時代は毛糸が普及どころか認識されていないので、俺は柔軟性のある細く長い組紐を作ってあやとりをするのだ。


『指先の細かい動きの訓練にはちょうど良いかと思いまして。

俺も鬼狩りの際に左手の糸を使うんですが、あやとりはその訓練になります。』


例えばそうだな…と思いながら左手の糸を展開すると四方八方に糸を飛ばして手首を回したり指を曲げた。


『僅かな指の動きだけで物を動かすことができます。

人差し指を少し動かせば扉が開いたり閉まったりして、薬指を曲げれば遠くに置いた木刀に引っかかる。そして薬指以外の指をパッと開いて手首を曲げれば……


糸が巻き戻って木刀だけが引き寄せられる』


実際に説明した事全部をやって見せて木刀をカナエさんの横に置くと左手首の巻き取り装置を見た。

これで何が言いたいかと言うと、戦い以外にも便利な事はいっぱいある。


『糸の使い方はその人次第です

戦いだけでなく生活にも糸を使うと便利ですし何より自分の繰糸技術は戦いだけでない虚しい技術ではないと証明できますから。

あやとりは指を細やかに動かす基礎練習、カナエさんが生活で先程の扱いが出来るようになれば誰も馬鹿にしませんから。』


両腕を失ったというハンデをものともしない、自分は凄いんだぞと胸を張って言うことが出来る。

そんな日が来てくれたらいいな

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