死亡確定キャラに成り代わったら誰だって凹む

参拾伍の目 ページ35

硫黄の匂いが漂うこのエリア

なんだろう…この時点で心も体も癒されそう


『えっと、今回はカナエさんの義手を造る前に傷口の完治が先だから……』

｢あらあら〜普段から私のことはカナエと呼んでもいいのよ？｣


隣に立つ程までに回復したカナエさんからの言葉に心臓が口から飛び出そうになる。

どうにか耐えて静かに深呼吸するとカナエさんの呼び方については否定だけした。

その後も俺は何も言えないチキンで、隣にいるカナエさんはただニコニコ笑ってた。


『あー…宿に行きましょうか。そこで俺以外の補佐に任命された隠がいるので』


宿に向かえば事前に連絡しておいた女性の隠とも合流して部屋に持ってきた荷物を置いた。

女性の隠に今回のことを依頼したのは当然、生活のサポートを全て俺がやる事が出来ないからである。

それに俺は付き添いってだけだしな

ついでだし俺も武器のメンテナンスをお願いしに行くか。

先日の上弦の弐との戦いでトラップ用の糸だけでなく人差し指の糸も切られてしまったからメンテナンスをしなければ。

何とか切られた糸と先端の刃は回収出来たけど随分と凹むものだ。

俺が未熟だったせいでこんな事に…とりあえずこれを作ってくれた鉄珍様に土下座しよ

鎹鴉を肩に乗せて優しく撫でるとお願いをした。


『いつも君達を頼って申し訳ないけど、カナエさんを見守ってくれないか？

また失敗しないように…ね？』

｢かしこまりました｣

｢主の弟子は俺の弟子、仕方がないから引き受けてやる。｣


俺には鎹鴉が2羽いる

1羽は俺が入隊した際にあてられた鴉、もう1羽はお師匠の鴉だ。

今は亡き主は尊重するけど弟子は尊重よりも可愛がると言った考えの持ち主で、師匠に似て時に厳しく時に優しく見てくれる。

主な長距離移動は俺の鴉で、俺のそばに居るのはお師匠の鴉である。

飛び立った鴉を見守って深く息を吸うと風呂に入って心を落ち着かせるかなと思った。


『その前に鉄珍様に挨拶だな…あと糸を切ってしまったことに対する謝罪』

｢主の刀を壊したんだから腹切れ｣


そんな無茶言うなよな…爺鴉がよ

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