死亡確定キャラに成り代わったら誰だって凹む

拾漆の目 ページ17

こちらに無数の手が襲いかかってくるのを呼吸を駆使して対処するが、正直いってキツい

後ろに庇ってる候補生は恐怖で動けない

せめて後ろのやつを連れて逃がす程の時間稼ぎをしないと…


｢余所見か？｣

『……！』


一瞬油断して目の前に迫るは巨大な手

シワの一本一本まで認識出来るほどに迫っているのに、呼吸を上手く扱えずにその場に立ち尽くしてしまった。





あっこれ死ぬやつだ







＿＿水の呼吸 肆の型 打ち潮



俺から大きな手を離すように水が流れて命拾いをした。

一体なんだったんだ…そう思って周りを見ると一人の影が佇んでいた。


『狐の…子供』

｢お前動けるか？

いや…男なら立ってやるべきことをやり抜け｣


こんなにも漢気のある者は初めて見た

でも聞いた事のある声と狐の面、そして羽織を見たらすぐに分かる。

今、彼は未来の分岐点にいるんだ

こちとら助けられた恩がある。ならばやることはひとつ



今後の為にも彼の死の運命を否定するだけだ



『君一人にする訳にはいかない…君の刀も限界が近い

ここで最も有効な手段で状況を打破した方が良いに決まってる。』


しっかりと刀を握って深く息を吸い込んだ

お師匠との約束のためにも戦え、そして勝って皆で生き残って帰るんだ。


｢くふふ…また俺の狐の子が来た

鱗滝の弟子の未来を断つことが俺の楽しみなんだぁ…！｣


汚い笑みと煽るような発言に隣の狐は怒り爆発も間もない

これはまずい



＿＿藤の呼吸 弐の型 蔓巻藤



素早く相手の予測出来ない角度から攻撃してはひらりと避ける

それを続けるしつこさはまさに延々と巻きついてくる蔓のよう

動きを封じたら後は逃げるだけだ

しっかりと狐の手と腰を抜かした候補生の手を握ってその場から離れるように逃げると片方に握る手が離れようと暴れた。

おいおいやつに追いつかれるだろ、何のための時間稼ぎだ。

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