08‐Heart ページ10
私が息を吸って、クロくんの問いかけに答えようとする。
同時にクロくんは、私と視線を合わせて、逃げ場の無いように計らった。
「中学の、友達が来てた。」
クロくんは、私の答えを聞くなり、距離を一気に離して、
「そっか。……よかった。」
と、優しい笑みを浮かべて、そう言った。
クロくんはやっぱり、光ちゃんと同じ椅子に座って、そしてそれは征くんの椅子なのであった。
「無理して起きてなくていいのに。」
クロくんの言葉には、愛があった。
私に矢印の向いた言葉。
クロくんから向けられた、温かい言葉。
「……有難う、クロくん。」
薄く笑うと、クロくんは私の頭をふわりと撫でた。
ふと、クロくんの体温から、男らしさを感じた。
私よりも大きい手。
私よりも頑丈な手。
クロくんの手が、私の頭から離れる瞬間、私は自分でも気づかないうちに、クロくんの手を掴んだ。
「A……？」
クロくんが不思議そうに私を見つめる。
それでもかまわず、私はクロくんの手をつかみ続けた。
「眠るまで。……お願い。」
クロくんの目をまっすぐ見つめて頼むと、クロくんは首を縦に振って返事をしてくれた。
両手にクロくんの温かさを感じながら、私はベッドに元通り、横たわり、眠りについた。
―――――――――――――目を覚ますと、隣にはクロくんの代わりに征くんが居た。
部屋の壁の真ん中に掛かっている電波時計を見ると、七時五分を指している。
征くんが、こんな夜遅くに、何をしに来たというのだろう。
「……Aちゃん。」
征くんは、今にも泣きそうな顔をしていた。
心なしか、私の名前を呼ぶ声だけは、いつもよりハッキリしている気がする。
「オレ、バスケも一番になる。……勉強も運動も一番になって、Aちゃんのこと治す！」
家で、何か言われたのだろうか。
征くんの口調が、いつもより荒々しく、言うことが断定的だ。
「……一番を目指すのはいいことだよ。……でもね、一番に《拘る》のは時として悪い事なの。」
征くんの言葉を、少しずつ、溶かしていく。
温かい、母のような言葉を心掛けて。
私は征くんの頬に触れ、征くんの目から伝う涙を、ぬぐった。
「私の事はいいの。……征くんは征くんの為の人生を生きなさい。……じゃなきゃ後悔する。」
征くんの頭をぐしゃっと撫でて、病室から送り出す。
征くんの背中は、心なしかいつにもまして小さいように思われた。
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MIORINE(プロフ) - nanoさん» コメントありがとうございます。続けてほしいと言って下さる方がいらっしゃるので頑張ってみることにしました。 (2014年11月24日 15時) (
レス) id: c4fda7ba0c (このIDを非表示/違反報告)
nano - もう遅いかもしれませんが私は続けて欲しく思っております。まあ1読者の意見ですので続けるかは貴方様の判断で良いと思いますが…(´・ω・`) (2014年11月24日 15時) (レス) id: f0d8cf3aaf (このIDを非表示/違反報告)
MIORINE(プロフ) - 和人孫さん» コメントありがとうございます。本当に長々と続いてしまうかもしれませんが、頑張ってみます。 (2014年11月24日 14時) (レス) id: c4fda7ba0c (このIDを非表示/違反報告)
MIORINE(プロフ) - 夜宇宙さん» コメントありがとうございます。更新改めて頑張ってみることにします。 (2014年11月24日 14時) (レス) id: c4fda7ba0c (このIDを非表示/違反報告)
和人孫(プロフ) - もし、たくさんの時間がかかっても 終わり が見たいです。待ってます。 (2014年11月24日 6時) (携帯から) (レス) id: 4d48cfdd75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MIORINE | 作成日時：2014年10月19日 20時
