69 K.Y ページ22
−岸side−
俺が経営する、このレストランの店仕舞いは早い。
何故なら、俺のもう一つの家族＿＿神宮寺といわげんと海人と廉、そして、俺が勝手にだけど帰りを待つ、紫耀。彼らとの時間を最優先に、大事にしているからだ。
せっかく一緒に暮らしているのに、それぞれバラバラの生活なんてあまりにも寂しすぎる。そう考えているのは俺だけではないのだろう。俺よりずっと出世してる翻訳兼通訳者のいわげんもフリーの道を選んで、神宮寺もそこまで忙しすぎない程度に緩くモデルの仕事をしている。海人も今はまだ学生だし、まあ漫画家になったらなったでそれこそ毎日家にいるだろうな。
その中で廉だけが今、帰りが遅かったりするくらいで。新入社員だしあの超絶有名らしいシャングリア社という事らしいし、仕方ないかと、本当は寂しい気持ちに蓋をする。もう少しすればそのうち落ち着くだろうと。
その日は、珍しくも海人は漫画サークル、神宮寺はモデル仲間との付き合い、いわげんは通訳の仕事でいなかった。今晩は永ちゃんと二人かぁ......。あいつの好きなもんでも作ってやろう。そう考えながら、片付けを終えてコックコートを脱いだ時、電話がかかってきた。
k「はいもしもし〜」
『.......優太？俺、廉やけど』
k「は、廉？どした？」
あいつ家にいるはずだったよな。訊くとどうやらコンビニに向かっていたらしい。またこんな大雨によく......。
n『あのさ。今から店、行ってええ？......ちょっと、友人に会ってな＿＿』
何かと思えばいきなりそんな事を言い出す。
ぐるりと見回す、今まさに片付け終えたばかりのピカピカな厨房。
k「＿＿おう。大丈夫だ」
受話器越しからでも感じた、廉の何か緊張感を含んだ、いつもと違う空気。
そう答えれば、ほっとしたように息を吐くのが聞こえてきた。
n『サンキュ。じゃあ今から行ってええねんな？』
k「おう。待ってる」
廉だってわかっていたはずだ。俺がもう店仕舞いをする時間だという事を。あいつは無理強いなんてしない、実は気遣いのできる優しい心の持ち主。それなのに、今回こうやってお願いしてきた。きっと、何かがあるに違いない。その、友人が関係しているのか......。
それにしても。そんな近くにいるのなら、わざわざ電話してこなくても直接俺の所に来て訊けばよかったのに。
そうしなかった、というのも何か訳があるのだろうか。あ〜俺にはわかんねぇや＿＿
さっき脱いだコックコートをもう一度羽織った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 578人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ありす(プロフ) - ichiconv6さん» 先が読めないサスペンスと言って頂けるのは本当に感激です！どうか今後もよろしくお願い致します！ (2020年3月12日 23時) (
レス) id: 5980c14644 (このIDを非表示/違反報告)
ichiconv6(プロフ) - 本当にどうなる？先が読めない展開…果たして廉紫耀は再会して幸せになるのだろうか…土曜サスペンスみないな効果音が聞こえるよ。 (2020年3月11日 23時) (レス) id: 9124e2aeb0 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - 蘭さん» 反応ありがとうございます！どうなってゆくのか、展開をどうぞお見守りください...！笑 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 5980c14644 (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - うわああああああああやばいですうううううう！！！！！！最後の1文やばいてすうううううう (2020年3月4日 6時) (レス) id: 34cf0ac15c (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - あおいさん» あおいさんはじめまして。中毒性高いというのは初めて言われました！とても嬉しいです、ありがとうございます！ゆったりやってますがどうかよろしくお願い致します♪ (2020年2月25日 22時) (レス) id: 5980c14644 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ありす
| 作成日時：2020年1月20日 21時
