ルージュの指輪 (ページ27)

今日:52 hit、昨日:8 hit、合計:34,579 hit

・ページ27

・

「予約してた道枝です。」
「道枝様。お待ちしておりました。」

慣れない空気にそわそわしながら後ろをつける私の手が握られた。ついこの間までは何とも思わなかったというのに。どうしてたっけ、なんて考えてしまう。

「失礼致します。」

「あかんわ、緊張する。」
「別に俺相手なんやからええやん。」
「雰囲気の問題よ。」

平気そうな彼を見て、妙に不安になる。
慣れてるんだとしたら誰と来た？

あぁ、またこんなことを考えて。

「まぁ、俺も慣れてはないんやけどな。」
「…」

「あれ、違った？」

待たせているのだと、自覚した。

もし私が彼の立場だったとしたら、
待つなんてとても出来ないだろうに。とも。

それでも嫌な顔一つ見せずに、私だけを見てくれる彼が
昔から大事だったんだ。ずっと、今でも。

「…違わん。」

「A顔に出るから分かりやすいねん。」
「駿佑もそうやで。」

「まぁ、言われるけど。」

恥ずかしいからと逃げるのはやめよう。
そう、言い聞かせた。