ルージュの指輪 (ページ23)

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「あれは、Aの話してたから。」
「…え？」

照れくさそうに言われたのは、予想外のものだった。

「普段、友達に自慢できひんから。」

心配性すぎる彼は友達に私の話をすることを避けているらしかった。女子ならそんな心配をする必要がないから。調子に乗って話しすぎた、と。

「…嫌な思いさせてごめん。」
「いや、勘違いしてた。」

それに対して高橋くんと駿佑以外の話をしていた私は、悪いヤツだと思った。もし、この関係が"ごっこ"だとしても。

「ほんまはこんなタイミングで言うつもり無かったんやけど、先延ばしにしたらもっと言えんくなる気がするから。」

まさに、私が考えていたことが起こる気がした。
顔を上げた駿佑と目が合って、落ち着かずに動く指が私のものと重なって。

「俺、中学の時からAのこと好きやねん。」

嬉しいはずなのに、なんとも言えない気持ちになる。
照れ隠しのためにかわしてきたその好意を受け止めるには、手遅れなほどに拗れてしまっていた。

「Aの気持ちを優先するから。でも、これだけ許して。」

吸い込まれるように抱きしめられた身体。
身長差のせいで背中を曲げた彼の顔が肩に乗る。

「好き、」

耳元で響いたその言葉だけが、離れずにいた。

「じゃあ、明日からまた一緒に行ってくれる？」
「うん。」
「ありがとう。」