つめたいフリの本心は [赤]

甘いチョコ、幸せの名前 ページ1

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付き合い始めたのは、春。



その桜の木の下、大学のベンチはあたしと彼の定番の待ち合わせ場所になっている。

近づいてくる影は変わらない、ちょっと前屈みに見える。

ベンチから勢いよく立ち上がって飛びついた。


「しーげおかっ！」

「おわっ、」

「どこいく？お昼」

「...俺久し振りにラーメン食いたい」

「じゃあ行こ」



折角彼女とランチに行くというのにチョイスがよりによってラーメンなところも、

相も変わらずあまり愛想がないところも変わらない。


でも、無理して冷たくしていたあの頃に比べたらずっと柔らかくなった。

一緒にいると、安心する。

あたしは今、しげおかの隣にいるんだって。



お昼時で混んでいたラーメン屋さんの列に並びつつ携帯で時間を確認すると、「2月7日水曜日」の文字。

ああ、今年も何作るか決めなきゃ、そろそろ。


でも水曜日ということはしげおかと被る授業はない。

ということは当然渡す機会もないわけで。



「しげおかあ」

ちょっと斜め上を向くとなに？と返す横顔。

なんにも、ぼーっとしてましたよー、って顔してるけどあたしは気づいてる。


ラーメンのメニュー表をじーっと見てたこと。


結構味玉入れるか入れないかで悩んでたりするんだろな、と思うとちょっと面白くて。

ニヤッとすると、なんやねん、とちょっと怒った口調で言われた。



「来週の水曜、授業終わってから会える？」

「ええよ、じゃあ家行く？」

「あ、それでもいい」

「じゃあ行くわ」


少し口角が上がったのが分かった。

やっぱり嬉しいんだな、

笑っていると袖口を強めに引っ張られた。



「っぶねえなあ」

すれすれで通り過ぎて行ったのはママチャリ。


「もうこっちに立っとけ」

そう言った横顔はいつもよりちょっと柔らかくて、こんな顔もするんだ、なんて思った。


あたしばっかり好きなのかもしれないけど。

それでもいいと思った。

どんどん、一日会うたびに好きになっていく。


それがこんなに幸せだったことはなかった。







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