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掴んだ手を一向に離してくれない智。
「俺はAをそんな子に産んだ覚えも、育てた覚えもないわっ！」
「いや、あなたに産んでもらった覚えも育ててもらった覚えもないから。」
これは、私が折れるまで終わらないパターン。
結局、なんだかんだでいつも智には勝てないんだ。
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ふぅっとひと息ついて
「…分かった。
断るよ。」
「本当に？」
「うん。」
「ありがとう。」
同時にするり、と手が離された。
智は安心したようにニマッと笑いお礼を私に言うと、またアクアパッツァ作りに専念する。
「これ今日釣って来た真鯛だよ。早く着替えておいで。」
「へー。仕事休みだったの？真鯛なんて凄いね。ちょー楽しみ。」
「そう。船長と頑張ったんだから」
私もそんな智を見て自然に微笑む。
いつもはナマケモノのようになーんにも考えてなさそうにしてるけど、実際にはこうやってしっかり自分の考えを持っている。
自分が一度、こうと決めたら絶対に貫く意志の強い人。
めちゃくちゃ優しそうだけど、本当は強い人。
草食動物かと思わせて、実際は肉食動物。
きっと、こんなギャップに世の女子達はメロメロなんだろう。
「智。最近彼女いないの？」
着替え終えてから、リビングのテーブルにセッティングされていた料理達を眺めながら尋ねた。
「うん。もうこの歳になってくると、すぐ結婚だ、親に会わせるだ、ってなるから面倒なんだもん。」
「なんだもん。だなんて可愛く言ってんけど、内容は相当な鬼畜発言だけども。」
フォーク、スプーンを取り出して智と一緒に席に着く。
「俺、あいつらとは結婚はしないから。」
「いいよね。男の人は。適齢期過ぎてもまだチャンスはいくらでもあるからね。」
「ふふふっ。俺はチャンス狙ってるだけなんだけどね。」
「どっちなんだーい。」
この意味不明な智の発言を、いつも翔が通訳してくれていた。
その瞬間を智は逃さない。
「ほら。思い出してないで食べよう。」
「…うん。」
冷えた白ワインを注いで
「美味しそう。いただきまーす。」
乾杯して誤魔化すようにアクアパッツァを口に入れる。
「んー！デリシャース！」
「まじ？」
「うんうん。まじ。美味しいっ。
もったいないわ。いい嫁になるのに。」
「じゃあAが貰ってよ。」
「やだよ。私が養われたいわ！」
智の料理は美味しい。
でも、本人は食にあまり興味がない。
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ことら(プロフ) - とも様コメントありがとうございます！こちらのお話を読んでいただいて大変光栄です。智さんには報われて欲しくて今回このお話を書きました。感想をいただいて感謝です。ありがとうございますm(_ _)m (2021年4月16日 22時) (
レス) id: 3fdd75fac9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 優しすぎる智くんに涙です。ずーっと大好きな彼女を想い、さりげなくそばで守り、健気で泣けてくる。やっと自分の気持ちを伝えて両思いになれ結ばれて〜嬉しくて言葉になりません(笑)とっても心が暖かくなりました。素敵なお話をありがとうございました。 (2021年4月16日 17時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ことら(プロフ) - けいこさまコメントありがとうございます。智さん不足は私もです(笑)また会える日を励みに頑張りましょうね。 (2021年4月12日 20時) (レス) id: 3fdd75fac9 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - 智くん不足で今になって読みました。ますます‥智くんに会いたい気持ちがジワジワ。可愛くてカッコいい智くんを描いてくださりありがとうございます！ (2021年4月12日 6時) (レス) id: 329673fcf6 (このIDを非表示/違反報告)
ことら(プロフ) - なるちゃんさんコメントありがとうございます！こんな未熟者の作品を褒めていただき恐縮です。 (2018年8月29日 12時) (レス) id: f90816f02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ことら | 作成日時：2018年7月28日 23時
