17 ページ17
.
いずれにせよ、いつかその日は必ずやって来るんだ。
「大丈夫だから。」
そう言って智に微笑んで電話に出る。
「もしもし。」
「よぉ。A。この間のイケメンさんとどうなのよその後？」
人の気も知らないで嬉しそうな声。
「うん。ぼちぼち。」
なんて、強がりを言う。
「それもそうだけど、式の日程が決まったから早めに言っとかないとと思ってさ。さっき智くんにも連絡したんだけど。」
ズキン。
痛いな、まだまだ。
電話越しで、すんごい嬉しそうに笑ってる翔の顔が思い浮かぶ。
「そんな…まだ先でしょ？」
「…それがさ…。子供出来ててさ…。」
「…っ。」
「だからお腹目立つ前の綺麗な体型の時にドレス着たいって結佳が言うから、式を急遽早める事にしたんだ。世間体もあるしな…。」
その瞬間耳鳴りがして、翔の声がほとんど聞こえなくなる。
「おめでとう！楽しみだねっ！翔と結佳さんの赤ちゃんなんだから男の子でも、女の子でも絶対可愛いんだろうなぁ。」
今聞こえた翔の声を思い出して声を振り絞って伝える。
「サンキュー。」
そこからは、幸せそうに話している翔の声がほとんど聞こえなくて、聞きたくなくて、
「A？聞こえてる？」
返答のない電話に不思議に思ったのか、翔が確認して来る。
「ごめんごめん。今出先だから電波があまり良くないみたい。もし急ぎなら後でラインちょうだい。本当ごめんね。」
「おう、こっちこそそんな時に悪りぃな。」
その謝り方、学生の時と変わらないね。
最後の挨拶もままならない状態で通話を終える。
電波が悪いせいにして。
少し気持ちが落ち着いて来たところだったのに、また奈落の底に突き落とされた。
今日の帰りの時のように自分の足元を見ると、
そこには死刑台へと続く階段が見えた。
ここから一段ずつ自分で上って行くんだ。
.
その日がもうすぐやってくる。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ことら(プロフ) - とも様コメントありがとうございます！こちらのお話を読んでいただいて大変光栄です。智さんには報われて欲しくて今回このお話を書きました。感想をいただいて感謝です。ありがとうございますm(_ _)m (2021年4月16日 22時) (
レス) id: 3fdd75fac9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 優しすぎる智くんに涙です。ずーっと大好きな彼女を想い、さりげなくそばで守り、健気で泣けてくる。やっと自分の気持ちを伝えて両思いになれ結ばれて〜嬉しくて言葉になりません(笑)とっても心が暖かくなりました。素敵なお話をありがとうございました。 (2021年4月16日 17時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ことら(プロフ) - けいこさまコメントありがとうございます。智さん不足は私もです(笑)また会える日を励みに頑張りましょうね。 (2021年4月12日 20時) (レス) id: 3fdd75fac9 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - 智くん不足で今になって読みました。ますます‥智くんに会いたい気持ちがジワジワ。可愛くてカッコいい智くんを描いてくださりありがとうございます！ (2021年4月12日 6時) (レス) id: 329673fcf6 (このIDを非表示/違反報告)
ことら(プロフ) - なるちゃんさんコメントありがとうございます！こんな未熟者の作品を褒めていただき恐縮です。 (2018年8月29日 12時) (レス) id: f90816f02b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ことら | 作成日時：2018年7月28日 23時
