鼓動 ページ12
リハーサルが終わりランチタイム。
「やっぱここのオムライスうめぇ。」
しょーくんがリスみたいにもきゅもきゅ美味しそうに食べてくれる。
食べ物って人を幸せにしてくれる大切な存在。
人は美味しいものを食べた時笑顔になる。
その笑顔が見たくてこの仕事を選んだ。
「…しかし、なぜ私の隣にいるの？智さん？」
スタジオの一角に長テーブルを何列か並べてそこで食事をしている出演者やスタジオスタッフさん達。
それを目の前に作業テーブルに立って配膳している私達のテーブルの端っこにイスを持って来て1人で食べてる智。
「場所がないんだもん。」
「いやいやいや。天下の嵐なんだからそんな訳ないでしょーに。」
「ぶー。」
「輪を乱さないの。これも仕事でしょ？
しょーくん見習いなさいよ。」
しょーくんはこんな時でも輪の中心にいて場を盛り上げている。
「しょーくんはしょーくん。
俺はしょーくんにはなれねぇ。」
「はいはい。もう好きにして。」
あの日以来、いつも以上に智が私の家に来る。
「ね？ね？A？頭ぽんぽんしてくんねぇーの？」
「あほ。
ここでやったら私はもう外歩けなくなるわ。」
「んふふ。それもいいかも。」
訳分かんない事を言ってひとりご機嫌な智。
結局、スタッフさんに呼ばれるまで私の隣に居続けた。
「さて、片付けに入りましょか。」
皆さま食べ終わってそれぞれの作業に戻って行ったところで私達の役目は終了。
荷物を持ってトラックへ向かうためにスタジオのセットの横を通っている時に
「ガタッ」
何かの物音と同時に
「A！！」
私を呼ぶ智の久々に聞いた大きな声。
呼ばれた方をふり向こうとした時に左手を強い力で掴まれ引かれた。
「？！」
次の瞬間に
「ガシャガシャーン！」
物が崩れ落ちる音が聞こえて人々の騒ぎ声が聞こえた。
ふと気づくと、私は誰かに覆い被さられた状態で床に倒れ込んでいた。
そして右手で後頭部を覆われて誰かの腕の中でしっかり守られていた。
目を開けても腕の中なので視界は真っ暗。
私を守ってくれた人の鼓動だけがどくどくと聞こえる。
でも…。
「…しょーくん…？」
「…はぁーーーあっぶねぇーーー。Aさん大丈夫？」
しょーくんだって分かる。
しょーくんの香水の香りがする。
しょーくんの雰囲気を感じる。
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作者名：ことら | 作成日時：2017年12月13日 14時
