recoup 24 ページ24
.
愛想笑いなんかとは全く違う彼女の笑顔。
それを見てしまえば 涙が溢れそうになって、
勝手に手が動いて、
ごめん、そうとだけ ぽそりと呟いて 俺はAを抱き締めていた。
驚いた彼女の ひゃっ…!?って可愛い声も、
この細い肩も、彼女の温もりも、当たり前やけど 全部全部、変わらなくて。
俺のことは覚えてないくせに、今俺に対して浮かべた笑顔は こいつのままだった。
俺の大好きな、こいつの つい零れた心からの笑顔。
｢ し、ま…さん？ ｣
｢ …悪い、あと…もうちょいだけ ｣
｢ …こちらこそ、ごめんなさい… ｣
申し訳なさそうに謝るところとか、
俺の背中に回されない腕とか、
そういう節々から伝わってくるこいつの気持ち。
分かってるよ。
分かってるから。
もう、Aが俺のことを好きじゃないって。
だって、覚えてもないんやから。
好きって感情だって 忘れちまうよな。
＿＿＿でもやっぱ、俺はお前が…
｢ 悪い悪い、ちょっと女に飢えてた ｣
｢ っはぁ！？あんた そんな理由で突然抱きついてきたん！？ ｣
｢ おう、悪いな ｣
｢ 意味分からんっ、あんたなんか 志麻さんやなくて 志麻で十分やわっ！！！ ｣
そっとこいつから離れて、出てきた言葉はあんなので。素直に お前が好きだなんて言ったら、彼女は絶対困って悩んでしまうから。
｢ 志麻でええよ、っつーかそうしてくれ。お前に 志麻さんとか言われんのこっちからすると めっちゃ寒いんやわ ｣
｢ 腹立つわぁ… びっくりしたやん。…もしかしたら、志麻って彼氏なんかなとか思ってもうた ｣
｢ だったらどうする？ ｣
｢ 悪いけど私、好きな人 坂田やから ｣
｢ はっ？ ｣
｢ うん ｣
だから、志麻は 仲良い友達さんっての 結構納得してんねん。協力してくれてたり？なんて 笑いながら聞いてくる彼女に、引き攣った笑みを返す。
おいおい、勘弁してくれよ…
次から次へと、俺の心を抉ることばかり。
｢ 志麻くーん！Aー！戻ったでー！ ｣
｢ 坂田、おかえりーっ！何買ってきたん？ ｣
｢ Aの好きなカルピスとー、志麻くんは コーラでええ？……志麻くん？ ｣
｢ あ、あぁ…ありがとな ｣
｢ うん！ ｣
にぱって笑う坂田から 自然と逸らす。
坂田もAも 全く悪くないのに、勝手に憎んでしまいそうで、先程聞いたことは忘れようと 坂田からもらったコーラを飲み込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 269人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ざゆ(プロフ) - 本当に本当に本当に最高でしためちゃくちゃ泣きました！！こんなすてきなさくひんをありがとうございます、また何回も読みに来ると思います本当に大好きです！！ (2020年8月11日 1時) (
レス) id: d0019edafb (このIDを非表示/違反報告)
空っぽのコップ(プロフ) - センラさんに正直に話す所から涙が止まりませんでした。こんなにも素敵な作品を作って下さってありがとうございます！ (2019年6月28日 7時) (携帯から) (レス) id: 7582f8fce2 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - ぷりん畑さん» お返事遅くなって申し訳ありません。私の作品なんかで涙を流してもらえるなんて光栄です!ぜひrecoupを聴きながらまたこの作品を呼んでもらえると嬉しいです！ (2018年6月7日 3時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん畑 - お友の紹介で読み始めたんですが、夢主事故った位からずっとうぅうぅ泣きながら読んでました。またrecope聴きたくなりました。大好きです。 (2018年5月25日 22時) (レス) id: ddc5e690a1 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - 葵香さん» 素敵な曲ですよね、あの曲私大好きです(*´ω｀*)ご覧いただきありがとうございました！ (2018年1月18日 1時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
