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もう絶対に、俺の元には帰ってこないと思っていた、この温もりも 笑顔も 香りも。
また、俺のものになったってわけで。
腕の中で微笑んでる彼女を見れば、痛いほどに実感して 涙が出てきそうになる。
「 なに、志麻。泣いてるん? 」
「 泣いてへんわ、アホ 」
「 泣き虫やなぁ 」
彼女は眉尻を下げて へにゃって笑って、俺の目尻に溜まった涙を掬い取る。
そして はたと気付いたように、私また…と自分の行動にびっくりするのだ。
「 お前、やっぱ 覚えてるよ 」
「 うそうそっ、覚えてないって!! …いや、こんなはっきり言うんもどうかと思うけど… 」
「 頭には無くても、身体が 」
きっと、彼女は 忘れたふうで忘れていない。
俺のことも、俺を 愛したことだって きっと覚えている。こいつの身体が、俺を愛したこと、俺の愛し方だって きっと全部。
思い出しても、思い出さなくても、こうなってしまった今 どっちでもええけど、
それでもやっぱ少し… 嬉しい。
「 つーかお前、坂田はどうした 」
「 どうしたって、何が? 」
「 好きだったんじゃねぇの 」
「 …志麻、が 」
「 あ? 」
「 志麻が 毎日毎日来て、優しくしたりとか笑わせてくれたりとかして!! いつの間にかあんたに染められてたんやんっ!! 」
「 …なんだよ、それ 」
「 軽い女だって、思った? 」
「 どうだってええわ。俺のことが好きなら 」
「 うわキザ… 」
抱き締めてる力を弱めて、キスをしようとすると びっくりして逃げ出そうとするから、仕方ねぇなって笑って 額に唇押し付けて。
今度は 我慢しねぇからな、なんて伝えたら もう志麻に会わんようにするとか言い出すし。
肌寒い玄関先で何やってんだろうな、って気付いて 笑って。でも、二人 引っ付いてれば 寒くないね、なんて 恥ずかしいこと言い合って。
「 ねぇ、志麻 」
「 ん? 」
「 …忘れて、ごめん 」
「 …あぁ 」
「 変わらず愛してくれて、ありがとう 」
「 …当たり前だろ、アホか 」
うっすら浮かぶ彼女の涙を拭って、俺は もう一度だけ 好きだと、彼女に告げた。
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ざゆ(プロフ) - 本当に本当に本当に最高でしためちゃくちゃ泣きました!!こんなすてきなさくひんをありがとうございます、また何回も読みに来ると思います本当に大好きです!! (2020年8月11日 1時) (レス) id: d0019edafb (このIDを非表示/違反報告)
空っぽのコップ(プロフ) - センラさんに正直に話す所から涙が止まりませんでした。こんなにも素敵な作品を作って下さってありがとうございます! (2019年6月28日 7時) (携帯から) (レス) id: 7582f8fce2 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - ぷりん畑さん» お返事遅くなって申し訳ありません。私の作品なんかで涙を流してもらえるなんて光栄です!ぜひrecoupを聴きながらまたこの作品を呼んでもらえると嬉しいです! (2018年6月7日 3時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん畑 - お友の紹介で読み始めたんですが、夢主事故った位からずっとうぅうぅ泣きながら読んでました。またrecope聴きたくなりました。大好きです。 (2018年5月25日 22時) (レス) id: ddc5e690a1 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - 葵香さん» 素敵な曲ですよね、あの曲私大好きです(*´ω`*)ご覧いただきありがとうございました! (2018年1月18日 1時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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