8 ページ8
薮先輩からの冷たい差し入れを受け取る。
じっとこっちに目線を向けてくる彼を無視し、
喉を潤すためにそれを開ける。
どれくらい窓拭きをしていたのだろうか。
身体はカラカラだったらしい。
喉に入っていくそのドリンクは
私の大好きなライチ風味。
そしてちょっぴり感じる塩気。
「…んーまっ。はー。生き返った！」
思わず声を出してしまっていた。
伊野尾「…ふはっ。おもしれーやつ。」
隣の彼は肩を上下しながら笑っていた。
なんでこの人まだここにいるんだ？
そんな疑問を抱えながら、また一口そのドリンクを飲んだ。
伊野尾「それ美味しいよな〜。俺も好き。」
そう言って私からそのドリンクを奪い、一口飲んでいた。
伊野尾「…ほいっ。」
「あっ、どーも。」
相変わらずこちらを見てニコニコしている彼。
「…っあの、なにかついてますか？」
伊野尾「…ほえっ。いーや。なーんもついてないよ？」
じゃあなんで見てくるんだよ。
そう思いながら、彼を睨む。
視線は外れないまま…
彼の瞳に映る自分の姿があった。
？「おーい！A！
今日は終わりだって！！」
その声のおかげで彼から目をそらすことができた。
多分睨んでいた時間なんてほんの数秒。
「分かったわ！今行く！
じゃあ、先に行きますね？
伊野尾先輩？」
彼は先輩。
挨拶ぐらいはするけど、歩く変態と呼ばれる彼とは極力関わりたくなった。
その場から逃げるように大貴の方へ向かおうとすると、右手を引っ張られた。
思ったより引っ張る力があり、よろめいた身体を支えてくれたのは
もちろん引っ張った本人だった。
伊野尾「苗字呼びなんて堅苦しい。
慧って呼んでよ？」
「…いやです。」
伊野尾「なんでよー！大ちゃんも光も呼び捨てじゃん！！！」
駄々をこねる先輩から離れることができる手段はなかった。
バゴーン
この音を聞くまでは…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍 | 作成日時：2017年5月12日 13時
