A beloved person... Kei.I×Daiki.A (ページ32)

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倒れてから数日が経った。

ここでの生活も残り半分を過ぎたくらい。

「…相変わらず暑いなー。」

伊野尾「…んー。そうだねー。」

「…って、なんでここにいるかなー？」

伊野尾「ほえ？俺体力ないもーん。」

そう言って彼は私の隣にいた。

またそのうち薮くんからの雷が落ちるだろうと思いながら。
バイト初日に比べたら海にくるお客さんも少なくなってきた。

伊野尾「カキ氷でも食べちゃう？」

「…今仕事中です。」

伊野尾「…ちぇ、つまんねーの。」

ザザーンという波の音を聞きながら、隣にいる慧くんを見た。

見ていることを知られたくなかったから、すぐに視線をそらしたつもりだったけど、彼は気づいていてニコッと笑ってくれた。

ふわりと柔らかい笑顔。

倒れた日から昔のことを思い出すことはしなかった。

大貴と慧くんもあの日のことがなかったかのように普通だった。
でも、なんであの日大貴は慧くんに掴みかかったのか。
それを聞くのも今更だなと思い、聞くのもやめていたか、胸にモヤモヤした気持ちがあった。

相変わらず大貴は接客をしてて、ギャル系のお姉様に声をかけられていた。
満更でもない顔を見て大貴もやっぱちやほやされたいんだなと少し寂しい気持ちになった。

少しずつ

ほんの少しずつ

気持ちの変化が起こり始めていた。