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あんまり長居するのもよくないと思い、
「伊野尾先輩?私もう行きますね?」
伊野尾「…まっ、待って。」
ぐいっと引かれた腕はあの日のように
伊野尾先輩の腕の中にすっぽりとはまったんだ。
伊野尾「…お願い。俺のこと慧ってよんで?」
掠れた声。
伊野尾先輩の表情なんてわからない。
ただ、ひっついている身体から
ドクドクと
どちらの胸の音なのかわからない音が聞こえた。
一瞬だけ、昔の光景が浮かんだ。
「…俺、けい。君は?」
ズキン
「…っ。わかり、ました。」
伊野尾「…その敬語もなしにして?
さもないと、チューするぞ。」
「…はあ?」
振り向いたら、本当にキスできるくらいの距離にいた。
あどけない笑顔で。
ドキン
「…からかわないでよ。」
伊野尾「…ははっ。じょーだんだってなんで思う?」
「…チャラいから…」
ふーん。と言って、彼は腕を離してくれた。
「…じゃあ、ごはんになったら呼ぶからね?」
伊野尾「…ほーい。じゃあね?A」
ドアを閉めて、すぐ自分の部屋に急いで戻った。
この気持ちに気づかないように…
まさか……
大貴が見ているなんて気づかずに…
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作者名:藍 | 作成日時:2017年5月12日 13時