検索窓
今日:29 hit、昨日:6 hit、合計:58,576 hit

標的143 ページ50

……なんなんだ。
何を見せられてるんだ、私は……!?

異様な光景を前に冷や汗が伝う。
眠った彼らを食い入るように見つめながら、私はふと眉を寄せた。

「……?」

ここに集められているのは恐らく、過去の自分と入れ替わった者たち。

しかし──未来の私の姿だけ、どこにも見当たらない。

この装置が何なのか、用途も仕組みも分からないけれど。
今見ているのは確かに、一連の事態に関わる重要な“なにか”であると直感が告げている。

導かれるように一歩を踏み出した、その時だった。


「──ここにはいないよ」


ふいに背後から響いた声。

いつからそこに立っていたのか。
振り返れば、ひとりの青年がこちらを見据えている。

その白服には確かに覚えがあった。
私たちが倒すべき、あの男と同じ──

「君は()()()()んだ。そして、失った」

何もかも全て、と彼。
心当たりのない謂れに眉をひそめつつ、目の前の男を見つめる。

……不思議だった。

この人のことを知らない、はずなのに。

「最悪の選択だった。僕らにとっても……君にとっても、ね」

ざぶ、と波をたてながら、こちらへ歩み寄る青年。
鮮やかな栗色の髪を揺らし、やがて正面で立ち止まった彼を見上げる。

「変えられるのは、“君”しかいない」

そう言って、彼はおもむろに私の肩へ手をかけた。

重く、まるで何かを託すように。

「……あなた、は」

言い終えるよりも先、その手がどん、と突き放される。
最後に捉えたのは、眼鏡の奥──少しだけ哀しそうに細められた瞳。

──直後、全身が水飛沫に包まれた。

水面に倒れ込んだのも束の間。
どういうわけかそこに地はなく、体はただただ沈んでいく。

あるのは闇と、時々聞こえるくぐもった水音のみ。


「(……確か、前にも……こんな、ゆめを)」


ぼんやりと既視感を覚えながら、落ちていく意識の中。



そんな私を、誰かがじっと見つめているような気がした。







「──僕が直接やりますよ。彼らの迎撃と、ボンゴレリングの奪取は」

無機質な部屋に男がひとり。
蹂躙の意を掲げ、中指の黄金色を鋭く光らせる。

「任せたよ、正チャン。こっちもそろそろ最終段階なんだ」
「……“例の実験”、ですか」
「うん♪楽しみにしててよね」

ぴくりと眉をひそめた彼に、もうひとりの男は心底嬉しそうに指先を絡ませた。

モニターの向こう、薄く開かれた瞳が笑う。



──覚醒は、もうすぐだ。

この小説の続きへ→←標的142



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (176 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
422人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~!近いうちに続編公開するのでお待ちください! (6月14日 12時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです!続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…!コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ!!!(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです!!ご馳走様です!!続き早く読みたいです!!おかわりください!!!!! (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜!!^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…! (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:オウリ | 作成日時:2020年11月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。