標的143 ページ50
……なんなんだ。
何を見せられてるんだ、私は……!?
異様な光景を前に冷や汗が伝う。
眠った彼らを食い入るように見つめながら、私はふと眉を寄せた。
「……?」
ここに集められているのは恐らく、過去の自分と入れ替わった者たち。
しかし──未来の私の姿だけ、どこにも見当たらない。
この装置が何なのか、用途も仕組みも分からないけれど。
今見ているのは確かに、一連の事態に関わる重要な“なにか”であると直感が告げている。
導かれるように一歩を踏み出した、その時だった。
「──ここにはいないよ」
ふいに背後から響いた声。
いつからそこに立っていたのか。
振り返れば、ひとりの青年がこちらを見据えている。
その白服には確かに覚えがあった。
私たちが倒すべき、あの男と同じ──
「君は
何もかも全て、と彼。
心当たりのない謂れに眉をひそめつつ、目の前の男を見つめる。
……不思議だった。
この人のことを知らない、はずなのに。
「最悪の選択だった。僕らにとっても……君にとっても、ね」
ざぶ、と波をたてながら、こちらへ歩み寄る青年。
鮮やかな栗色の髪を揺らし、やがて正面で立ち止まった彼を見上げる。
「変えられるのは、“君”しかいない」
そう言って、彼はおもむろに私の肩へ手をかけた。
重く、まるで何かを託すように。
「……あなた、は」
言い終えるよりも先、その手がどん、と突き放される。
最後に捉えたのは、眼鏡の奥──少しだけ哀しそうに細められた瞳。
──直後、全身が水飛沫に包まれた。
水面に倒れ込んだのも束の間。
どういうわけかそこに地はなく、体はただただ沈んでいく。
あるのは闇と、時々聞こえるくぐもった水音のみ。
「(……確か、前にも……こんな、ゆめを)」
ぼんやりと既視感を覚えながら、落ちていく意識の中。
そんな私を、誰かがじっと見つめているような気がした。
*
「──僕が直接やりますよ。彼らの迎撃と、ボンゴレリングの奪取は」
無機質な部屋に男がひとり。
蹂躙の意を掲げ、中指の黄金色を鋭く光らせる。
「任せたよ、正チャン。こっちもそろそろ最終段階なんだ」
「……“例の実験”、ですか」
「うん♪楽しみにしててよね」
ぴくりと眉をひそめた彼に、もうひとりの男は心底嬉しそうに指先を絡ませた。
モニターの向こう、薄く開かれた瞳が笑う。
──覚醒は、もうすぐだ。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~!近いうちに続編公開するのでお待ちください! (6月14日 12時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです!続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…!コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ!!!(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです!!ご馳走様です!!続き早く読みたいです!!おかわりください!!!!! (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜!!^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…! (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オウリ | 作成日時:2020年11月29日 23時